Dappiのツイート情報 12件が「誤り」「不正確」「ミスリード」 ――FIJの疑義言説データ29件の真偽を検証し判明


TwitterアカウントDappi(@dappi2019)の投稿のうち、NPO法人ファクトチェック・イニシアティブ(FIJ)が疑義言説として指摘した29件の言説を対象に、それぞれの真偽を確かめる作業を、Waseggのメンバーが実施した。そのうち、検証可能と判断した13件をファクトチェックし、1件が「正確」、6件が「誤り」、2件が「不正確」、4件が「ミスリード」という結果を得た。12件が誤情報だったことになる。

29件の疑義言説は、FIJが運営する疑義言説データベース「ClaimMonitor⑴」に登録されていた。WaseggはFIJにClaimMonitorの利用登録をしている。

Dappiをめぐっては、2021年10月に、立憲民主党の小西洋之、杉尾秀哉両参院議員が、ツイッター上の投稿で名誉を傷つけられたとしてDappiの発信元の回線契約者である都内のWEB制作会社を提訴している

 

TwitterアカウントDappiとは?

Dappi(@dappi2019)は、2022年2月現在で約17.9万フォロワーがいるTwitterアカウントだ。プロフィール欄には「日本が大好きです。偏向報道をするマスコミは嫌いです。国会中継を見てます」との記述がある。

2019年6月にアカウントを開設して以来、国会中継や保守系インターネット番組の切り抜き動画などを投稿し、野党批判を繰り返し行ってきた。

(図はWasegg 作成。Dappiが投稿した 全ツイートのうち、150回以上出現した単語が表示されている。文字の大きさは出現回数に比例している。⁽³⁾)
(Dappiが投稿した 全ツイートのワードクラウド(3)。150回以上出現した名詞を表示した。出現回数が多い単語ほど大きな文字になっている=Wasegg作成)

2021年10月には、立憲民主党の小西洋之、杉尾秀哉両参院議員が、ツイッター上の投稿で名誉を傷つけられたとしてDappi (@dappi2019)の発信元の回線契約者である都内のWEB制作会社を提訴している。この会社の取引先の1つが自民党だったことも注目を集めた。一方で会社側は、Dappiの投稿者は従業員だと認めた上で、会社としての関与を否定している

 

FIJの疑義言説データ29件の真偽を検証

こうしたこともあり、複数メディアが、Dappiは誤った情報を含む投稿を行ってきたと指摘している。他方でDappiの投稿をファクトチェックした記事は数少ない。Wasegg も加盟するFIJのメディアパートナーがDappiによる投稿を扱った事例は、BuzzFeed Japanの「党首討論「哀れな枝野」と動画が拡散→誤り。菅首相の「東京五輪の思い出」が編集され全カット(6)に限られている。

実際のところ、Dappiがどれだけ「誤った情報を流す」アカウントなのかについて十分な検証が行われてきたとは言えず、調査を行う必要があると考えた。

FIJの疑義言説データベース「ClaimMonitor」には毎月約200件の疑義言説が登録される。そのうちDappi関係は29件あり、ゼミ生の調査で検証が可能と判断した13件をファクトチェックすることにした。また、2021年10月に提訴があったDappiの投稿(2020年10月25日)は、ClaimMonitorには登録されていなかったが、疑義言説としてWaseggで独自にファクトチェックをした。一方で、歴史認識問題、主観や曖昧さなどが含まれる言説は、今回は対象外とした。

 

調査結果の一覧 12件が誤情報

以下が、その調査結果である。FIJが指摘した疑義言説13件のうち、1件が「正確」、6件が「誤り」、2件が「不正確」、4件が「ミスリード」となり、計12件が誤情報だった。これとは別に、Waseggが独自に検証をした1件(※印)の判定も「誤り」だった。

(表はWasegg 作成)
(表はWasegg 作成)

それぞれの言説に関するファクトチェック記事は以下のリンクからお読みください。なお、No.12の疑義言説については、検証の結果、BuzzFeed Japanと同じ内容になるため、今回は記事にしなかった。

「石油・天然ガスの9割近くは中東から」は不正確。2020年1月16日Dappiが拡散

立憲民主党・福山哲郎氏が恫喝はミスリード。Dappiが2020年5月11日に投稿

立憲民主党、「少し前まで『早くGoToをやれと』騒いでた」はミスリード。Dappiが2020年7月22日に投稿

「大村知事リコールへの運動妨害は公選法違反」は誤り。Dappiが2020年10月2日に投稿

「近財職員は杉尾・小西両議員が1時間吊るしあげた翌日に自殺」は誤り。2020年10月25日にDappiが投稿。両議員は提訴

日本学術会議「1300名連携会員は自動的に候補者になるが、それ以外の候補者は150人だけ」は誤り。Dappiが2020年11月2日に投稿

「司法が『朝日の慰安婦記事は捏造』と認定した」は誤り。2020年11月19日Dappiが投稿

「毎日新聞の世論調査の合計が100%を超えている」はミスリード。Dappiが2020年12月13日に投稿

2020年12月17日時点で、「中国から日本に入国する際はPCR検査未実施」はミスリード。「中国から日本へ2週間隔離なしで入国させている」は正確。Dappiが拡散

「今更、提案型になると意気込む立憲民主党」は誤り。2021年1月20日、Dappiが投稿

朝日新聞が「森友では開成小を安倍晋三小と捏造も 訂正せず」は誤り。2021年6月10日Dappiが投稿

デルタ株「鼻水だけで熱出ない」は不正確。2021年7月5日、Dappiが引用し拡散

Dappi(@dappi2019)は2019年6月にアカウントを開設し、21年10月1日の投稿停止までに5000件余りの投稿をしている。FIJの現在の疑義言説データベースは、2019年12月から「Claim Monitor2」として運用が開始され、ツイッター上などの疑義言説が収集されており、19年6月~11月までのDappiの投稿はFIJの収集対象とはなっていない。また※印の事例でわかるように、FIJのClaim Monitorにすべての疑義言説が集約されているとは言い切れない。

脚注

(1)ファクトチェックイニシアティブ、『疑義言説データベース[ClaimMonitor2]のサービス提供を始めました』、2019年12月30日
https://fij.info/archives/3965

(2)朝日新聞、『匿名投稿、2議員が提訴 「Dappi」アカウントから「名誉毀損」』、2021 年10 月14 日https://digital.asahi.com/articles/DA3S15075479.html

(3)@Dappi2019の全ツイートとしてAPIで収集できた5058件を、テキスト分析ソフトKH Coderを利用して形態素解析し、名詞ごとの頻度表を作成した。その頻度データをもとに、Rの「wordcloud」パッケージを用いて、単語の頻度の違いを可視化できるワードクラウドの図を描いた。出現回数150未満の名詞は除外している。

(4)朝日新聞、『匿名投稿、2議員が提訴 「Dappi」アカウントから「名誉毀損」』、2021 年10 月14 日https://digital.asahi.com/articles/DA3S15075479.html

(5)BuzzFeed、『Dappiは「従業員」が投稿、発信元会社が認めるも「私的なもの」「むしろ被害者」と関与否定、争う姿勢』、2022年2圧28日

https://www.buzzfeed.com/jp/kotahatachi/dappi-9

(6)BuzzFeed、『党首討論「哀れな枝野」と動画が拡散→誤り。菅首相の「東京五輪の思い出」が編集され全カット』、2021年6月10日
https://www.buzzfeed.com/jp/kotahatachi/toshu-toron

 

訂正

2023年3月25日 FIJの疑義言説データベースClaimMonitorに登録されているDappiの疑義言説の件数は32ではなく29でした。見出しと本文の数字を訂正しました。また、※印の疑義言説は、実際にはClaimMonitorには登録されていなかったため、その点が明確になるよう該当部分の記述を修正し、ファクトチェック一覧表に注を付け加えました。
 
 
運営責任者=瀬川 至朗

調査・記事担当者=鳥尾祐太

WaseggはFIJ(ファクトチェック・イニシアティブ)のメディアパートナーであり、この記事ではFIJのClaim Monitorの情報を活用しています。

レーティング(判定)はFIJが策定した基準(下記参照)を用いています。

FIJレーティング