【ファクトチェック記事】デルタ株「鼻水だけで熱出ない」は不正確。2021年7月5日、Dappiが引用し拡散

トップの画像はTwitterより

対象言説

2021年7月5日、TwitterアカウントDappi（@dappi2019）がデルタ株に関して以下の投稿⑴をした。

竹田恒泰「5万人以上の医師・看護師を抱える病院オーナーから『インド株は感染力が強い＝軽傷。かつてのコロナは“倦怠感・味覚障害・意識混濁”等の症状も、インド株は“鼻水だけで熱出ない・味覚失われず・眩暈等ない。ここまで軽症化したらただの風邪』と言われた」

こういう話はなぜか報じられず　

本稿では特定の地域に対する誤解や偏見を避けるため、引用部分を除いてWHOが推奨する「デルタ株」という呼称を用いる。

今回はDappiが引用し拡散した、デルタ株は「鼻水だけで熱出ない・味覚失われず・眩暈等ない」という言説をファクトチェックの対象とする。

（補足）このツイートでは、2021年7月5日にライブ配信が行われたDHCテレビ「真相深入り！虎ノ門ニュース」における作家・竹田恒泰氏の発言をDappiが要約する形で引用している。動画を確認したところ、竹田氏は、該当部分について「インド株に関しては、熱出ない、味覚も失われない、眩暈もふらふらもない。どんな症状が出るんですかって聞いたら、『鼻水だけだ』って言っていました」と述べている。

選定理由

Dappi(＠dappi2019)は約17.8万フォロワーがいるアカウントで影響力が高い。このツイートも2022年3月10日現在、3129件のリツイート、304引用リツイート、9267いいねを獲得している。

感染症に関する誤った認識が広がった場合、感染拡大を招いたり、政策評価が適切に行われなくなる懸念があるため、この言説を検証することにした。

判定

デルタ株は「鼻水だけで熱出ない・味覚失われず・眩暈等ない」＝不正確

判定理由

デルタ株にかかり味覚障害や発熱が生じたケースを厚生労働省がすでに公表していた

■味覚障害

厚生労働省が2021年6月24日に発表した資料「新型コロナウイルス感染症（変異株）の患者等の発生について⑵」によるとB.1.617.2系統の変異株（デルタ株）にかかり、味覚障害が生じた事例が1件確認されている（下記の図、NO.4参照）。

■発熱

さらに、2021年7月2日の発表⑶ではデルタ株感染者から発熱の症状が2件確認されている（下記の図、NO. 4、13参照）。

■眩暈

厚生労働省のホームページや新聞記事のデータベースを調べたところ、デルタ株と特定された感染者が眩暈を発症した事実は確認されなかった。

以上より、デルタ株による眩暈の症状は確認されていないが、竹田氏の発言およびDappiによる投稿があった7月5日時点で、発熱と味覚障害が生じたケースはすでに確認されていたことが分かる。

従って、デルタ株「鼻水だけで熱出ない・味覚失われず・眩暈等ない」は不正確だと判定した。

（補足）デルタ株の症状について

新型コロナウイルスの症状に関する厚生労働省の資料（資料２ー５ HER－SYSデータに基づく報告）⑷によれば、変異株が特定された有症状者を比べた場合、アルファ株よりもデルタ株で、発熱、咳、頭痛、嗅覚・味覚障害の割合が高かった（2021年1月1日～7月22日のHER-SYSデータをもとに集計）。なお、この資料には「眩暈」という項目は含まれていない。

表1　変異株（デルタ株・アルファ株）による症状の比較

	デルタ株	アルファ株
人数	5,211人	52,811人
発熱	84.9%	73.0%
咳	46.4%	43.2%
咳以外の急性呼吸器症状	9.5%	9.9%
肺炎像	2.6%	3.4%
重篤な肺炎	0.29%	0.40%
全身倦怠感	31.8%	30.5%
頭痛	26.8%	22.0%
嘔気・嘔吐	2.8%	2.3%
下痢	5.7%	6.1%
結膜炎	0.23%	0.20%
嗅覚・味覚障害	9.8%	8.0%

（厚生労働省の資料をもとに筆者作成）

脚注

(1)Dappi、Twitter、2021年7月5日
https://twitter.com/dappi2019/status/1411948794053156866?s=20&t=x7VL5mm58Szj3SQL5MLfSg
(2)厚生労働省、『新型コロナウイルス感染症（変異株）の患者等の発生について』、2021年6月24日
https://www.mhlw.go.jp/stf/newpage_19481.html
(3)厚生労働省、『新型コロナウイルス感染症（変異株）の患者等の発生について』、2021年7月2日
https://www.mhlw.go.jp/stf/newpage_19650.html
(4)厚生労働省、『資料２ー５ HER－SYSデータに基づく報告』https://www.mhlw.go.jp/content/10900000/000818356.pdf
＊最終アクセス日はいずれも2022年3月10日
運営責任者＝瀬川 至朗

調査・記事担当者＝丹羽ありさ、泉美紗季

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レーティング（判定）はFIJが策定した基準（下記参照）を用いています。