【ファクトチェック】日本学術会議「1300名連携会員は自動的に候補者になるが、それ以外の候補者は150人だけ」は誤り。Dappiが2020年11月2日に投稿


トップの画像はTwitterより
対象言説

Dappi(@dappi2019)が、2020年11月2日に「大塚拓『法学・政治学者は389人に1人が学術会議会員だが、電気電子工学は38486人に1人と100倍の差があり、日本学術会議は非常に偏り・特定グループの既得権益化してるのでは?そして1300名連携会員は自動的に候補者になるが、それ以外の候補者は150人だけ』 都合が悪い数字を出され騒ぐ野党」というツイート⑴をした。「#kokkai」というハッシュタグがつけられ、大塚拓議員が国会で発言する様子の動画が添付されている。

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今回は、このツイートのうち、「1300名連携会員は自動的に候補者になるが、それ以外の候補者は150人だけ」との言説を検証する。

選定理由

Dappi(@dappi2019)は約17.8万フォロワーがいるアカウントで影響力が高い。このツイートも2022年3月10日現在、4546件のリツイート、478引用リツイート、1.2万いいねを獲得している。本当に日本学術会議において、「1300名連携会員は自動的に候補者になるが、それ以外の候補者は150人だけ」との事実はあるのか。検証する必要があると考えた。

判定
1300名連携会員は自動的に候補者になるが、それ以外の候補者は150人だけ=誤り
判定理由

Dappiが質疑応答のやりとりを誤った形で引用

Dappiが添付した動画は2020年11月2日に行われた第203回国会 衆議院予算委員会で、自由民主党の大塚拓議員が行った質疑の一部分である

「1300名連携会員は自動的に候補者になるが、それ以外の候補者は150人だけ」との言説に関して、議事録には以下の記述がある。大塚議員の質問に答えた福井仁史氏は日本学術会議事務局長(内閣府)である。

097 大塚拓

これは、既得権化していることを統計上は強く示唆されておりますので、しっかりとここを見直し、切り込みをしていただきたい、このように思います。これは選考プロセスにやはり問題があるとしか思えないんです。このパネルは学術会議が配った選考プロセスを説明した紙でありますけれども、会員と連携会員がおのおの二人分の推薦枠を持っている、この結果、直近では千三百人が推薦の候補者となり、選考委員会を経て百五人に絞り込まれたんだということが書いてあるわけです。

ところで、一番上のところ、「現会員・現連携会員による推薦等」と書いてありますけれども、この「等」というのは何でしょう。御説明をお願いします。

098 福井仁史

この「等」は、現在の連携会員が一定の条件のもと候補者となりますので、それを指しております。

099 大塚拓

わかりますか、言っている意味。連携会員の方は推薦のプロセスを経ることなく自動的に候補に入るということを言っているわけです。そうすると、連携会員が自動的に推薦されるということですけれども、その割合、それ以外の普通の推薦で、この候補のプール、千三百人に入っている方というのは何人なのか、教えていただけますか。

100 福井仁史

約百五十名でございます。

つまり、実際の質疑応答のなかで語られたのは『会員の候補者1300人中、一定の条件下で候補者となる現連携会員を除いて、普通に推薦されている人数は約150人である』という内容だった。

しかし、Dappiのツイートでは、「1300名連携会員は自動的に候補者になるが、それ以外の候補者は150人だけ」とあり、元々の内容が誤った形でまとめられている。

また、そもそも福井氏が「現在の連携会員が一定の条件のもと候補者とな」ると述べているのを、大塚議員は「連携会員の方は推薦のプロセスを経ることなく自動的に候補に入る」とミスリーディングな形で発言している。

日本学術会議のホームページ⑶によれば、実際には「現在の会員・連携会員が次期の会員・連携会員にふさわしい方々の名前を挙げ(全部で5名まで、うち会員については2名まで)、そのなかから候補者を選考する」との方式が採られている。これによれば、現連携会員も推薦・選考のプロセスを経て「連携会員」になっており、かつ、「連携会員」全員が自動的に「会員」候補者になるわけではない。

以上のことから、「1300名連携会員は自動的に候補者になるが、それ以外の候補者は150人だけ」という言説は、誤りであると判定した。

脚注

(1)Dappi、Twitter、2020年11月2日
https://twitter.com/dappi2019/status/1323097354698805248?s=20&t=uPSib0u4fcS5PcXY1VYH-Q

(2) 国会会議録検索システム、「第203回国会 衆議院 予算委員会 第2号 令和2年11月2日」

https://kokkai.ndl.go.jp/#/detail?minId=120305261X00220201102&current=66

(3)日本学術会議、『日本学術会議に関するQ&A/1.会員・連携会員の選考に関すること』
https://www.scj.go.jp/ja/scj/qa/a1.html

*最終アクセス日はいずれも2022年3月10日

運営責任者=瀬川 至朗
調査・記事担当者=原田万凜
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