【ファクトチェック】「Dappiがアップした参院予算委資料を一般人は入手不能」は誤り。2020年1月のツイートがDappi問題で注目集める


トップの画像はTwitterより⁽¹⁾
対象⾔説

Twitter上で野党批判を頻繁に行い、誤った情報を含む投稿も行ってきた⁽²⁾Twitterアカウント「Dappi(@dappi2019)」が大手メディアに取り上げられ、話題となっている⁽³⁾。そのDappiと国会議員との結びつきを示唆する以下のツイートが拡散している。

「Dappiが昨夜アップした参院予算委員会の打順表について参院の広報に電話確認しました。広報によると、この資料は当日朝の理事会で承認前の「メモ」の扱いで、議員と霞ヶ関関係者に前日配布されるものだそうです。一般人は入手不能のためDappiは特定議員と一体のアカウントとみて矛盾はないでしょう」(投稿日は2020年1月29日)

(Twitterより)
(Twitterより)

このツイートは、2021年10月24日時点で2472リツイート、80引用リツイート、2716いいねを獲得している。今回は、2020年1月に投稿された「Dappiがアップした参院予算委資料は一般人には入手不能」というツイート情報をファクトチェック対象とする。

選定理由

先述したように、この情報はネット上で広く拡散している。

このツイート自体は約1年9ヵ月前に投稿されたものだが、21年の衆議院選挙に際して、このツイートを参照した言説が再度拡散している。以下のツイートは2021年10月6日に投稿された。10月24日時点で3710リツイート、106引用リツイートされ、4932いいねを獲得している。

(Twitterより)
(Twitterより)

また、立憲民主党の原口一博副代表は10月6日のツイートを引用ツイートし、「国会議員にしか配布されない資料をどうして入手できるのだろうか?」と投稿している⁽⁴⁾。

(原口議員のTwitterより)
(Twitterより)

Dappiが2020年1月にアップした参院資料は、本当に一般人には入手不能だったのか、事実を検証する必要があると考えた。

判定
「Dappiが2020年1月にアップした参院予算委員会資料を一般人は入手不能」=誤り
判定理由
福島みずほ議員がDappiより前に、資料をTwitter上に投稿

Dappiが、「一般人は入手不能」とされる当該資料をTwitter上で投稿した日時は2020年1月28日19時41分であった⁽⁵⁾。

(Twitterより)
(Twitterより)

 

しかし、社民党の福島みずほ党首(参議院議員)が、2020年1月28日の15時30分に以下の投稿をしている⁽⁶⁾。

(Twitterより)
(Twitterより)

福島議員の投稿に添付された資料(画像ファイル)は、委員会で質問に立つ議員のタイムテーブルであり、Dappiがアップした資料と同じ内容のものだった。

このことから、この参院予算委資料はDappiが投稿する以前に、福島議員がTwitter上ですでに公開していたことが分かる。誰でも福島議員のツイート資料を保存し、入手することが可能な状態だった。

福島議員とDappiが投稿した資料(画像ファイル)が同じものかどうかを詳しく調べるため、ファイル比較ツールDiffcheckerを使用し、2つの画像の違いの部分を抽出した。一見すると真っ黒の画面となったが、拡大してチェックすると資料の文字や線が画像全体に薄く抽出されており、同一物かどうかの判定はできなかった。画像の解像度(dpi)は同じだが、画像のファイルサイズは異なっていた。

 

 

スクリーンショット (208)

(Diffcheckeによる分析結果。2枚目のdifferenceの画面が2つの画像の差分を抽出表示したもの。)
(Diffcheckerによる分析結果。2枚目のdifferenceの画面が2つの画像の差分を抽出表示したもの。)
今回の検証は2020年1月28日のDappiツイートに限定したもの 他のDappiツイートは検証できていない

今のDappiアカウントは2019年6月に作成され、今年10月1日で投稿が止まっている。その間の投稿は膨大な量に上るため、そのツイートに掲載された資料全てが一般人も入手可能だったものかは、Wasegg の調査では判断できない。

しかし、今回取り上げた対象言説が「一般人は入手不能」としていた参院予算委員会の資料に関しては、誰でもTwitter上で入手可能な状態にあったことは確実である。

よって、「Dappiがアップした資料を一般人は入手不能」という言説は誤りと判定した。

 

オンラインメディアもDappiが「国会資料を事前に公開」と報道、後に削除

以上がファクトチェックである。なお、オンラインメディアのBuzzFeed Japanは、10月11日に掲載した「野党批判を繰り返すアカウント 「Dappi」の運営法人?  自民党支部や国会議員が取引、政治資金収支報告書などで明らかに」という記事内で、この国会資料の公開問題に触れている⁽⁷⁾。

当初の記事では、Dappiについて「関係者向けの国会資料を事前に公開し」ていたと報じていた⁽⁸⁾が、10月13日に「事前に」の3文字を削除していた。記事の末尾に「一部記載を修正しました」との表記はあったが、削除の理由が掲載されていなかったため、10月18日、BuzzFeed Japanにメールで問い合わせたところ、10月19日に以下の回答を得た。

「Dappi」のツイート内容や資料の性質などから、当初は「関係者向けの国会資料を事前に公開している」と記載していました。

しかし、国会議員がSNSで先に公開していた資料を転載した可能性もありました。SNS上で誰もが閲覧できる情報だった点への確認が不十分だったため、「関係者向けの国会資料を投稿している」に表現を修正いたしました。

Waseggからの問い合わせの後、BuzzFeed Japanは、「UPDATE」として当該記事の末尾に上記の文章を掲載し、「修正の経緯について説明が不足していたので、さらに追記しました。(BuzzFeed News編集部)」と説明している(⁹

 

脚注

⁽¹⁾Twitter、Dappi、プロフィール
https://twitter.com/dappi2019

⁽²⁾BuzzFeed Japan、『党首討論「哀れな枝野」と動画が拡散→誤り。菅首相の「東京五輪の思い出」が編集され全カット』、2021年6月10日

https://www.buzzfeed.com/jp/kotahatachi/toshu-toron

⁽³⁾朝日新聞デジタル、『Dappiのツイートは名誉毀損」立憲議員がウェブ関連会社提訴』、2021年10月13日

https://digital.asahi.com/articles/ASPBF6G9XPBFUTIL03Q.html

⁽⁴⁾⁾Twitter、原口一博、2021年10月7日
https://twitter.com/kharaguchi/status/1446123379023433729

⁽⁵⁾Twitter、Dappi、2020年1月28日
https://twitter.com/dappi2019/status/1222107410833084416?s=20

⁽⁶⁾Twitter、福島みずほ、2020年1月28日
https://twitter.com/mizuhofukushima/status/1222044293570813955?s=20

⁽⁷⁾⁽⁹⁾BuzzFeedJapan、『野党批判を繰り返すアカウント「Dappi」の運営法人?自民党支部や国会議員が取引、政治資金収支報告書などで明らかに』、2021年10月11日
https://www.buzzfeed.com/jp/kotahatachi/dappi-1

⁽⁸⁾archive.org、『野党批判を繰り返すアカウント「Dappi」の運営法人?自民党支部や国会議員が取引、政治資金収支報告書などで明らかに』のアーカイブ

https://web.archive.org/web/20211011111508/https://www.buzzfeed.com/jp/kotahatachi/dappi-1

*最終アクセス日はいずれも2021年10月25日

運営担当者=瀬川 至朗

調査・記事担当者=泉美紗季、内海⽇和、岡慧、高野莉子、鳥尾祐太

WaseggはFIJ(ファクトチェック・イニシアティブ)のメディアパートナーであり、この記事ではFIJのClaim Monitorの情報を活用しています。
レーティング(判定)はFIJが策定した基準(下記参照)を用いています。

FIJレーティング