【ファクトチェック】れいわ山本代表「れいわ新選組が野党統一候補として出られる所は1ヶ所もない」は根拠不明。参議院議員会館内で開かれた集会で発言
トップの画像は、2021年10月18日、日本記者クラブで行われた党首討論会に出席したれいわ新選組の山本太郎代表=©AFP/ISSEI KATO
対象言説
2021年10月15日、参議院議員会館で開かれた「新しい船をだそう!市民と野党のキックオフ@東京開催」の場で、れいわ新選組代表の山本太郎氏が次のように発言した。
「私達れいわ新選組も小選挙区におきまして、候補者を諦める、下げると言うことに関しましては全体のおそらく30%、それ以上に及ぶ、という状況です。一方で私達が、れいわ新選組が野党統一候補として選挙区から出られるところは一か所もありません⁽¹⁾」
今回はこのうち、「れいわ新選組が野党統一候補として選挙区から出られる所は1ヶ所もありません」という言説を検証する。
選定理由
衆院選の公示が19日に行われ、投開票を31日に控えている中、政党の代表である山本太郎氏の発言は大きな影響力を持ちうる。
また、この言説をめぐっては、2021年10月16日、落語家の立川段四楼氏が以下のツイートをしている。
「『私達れいわ新選組は小選挙区において、全候補者の30%以上を下げた。一方、私達れいわ新選組が野党統一候補として出られる所は1ヶ所もない』と山本太郎。れいわがこれだけ協力するのは目的が政権交代と消費税5%だからだが、そう思わない勢力があるということだ。それでも山本太郎は野党共闘を叫ぶ。⁽²⁾」
このツイートは10月22日時点で3663リツイート、127引用リツイート、9314いいねされている。本当に、れいわ新選組が野党統一候補として出られる所は1ヶ所もないのか、検証することにした。
判定
れいわ新選組が野党統一候補として出られる所は1ヶ所もない=根拠不明
判定理由
れいわ新選組12人擁立。山口4区の野党候補は「れいわ」のみ
れいわ新選組が候補者を立てている選挙区は次の通りである。
東京2区(北村イタル)、東京22区(くしぶち万里)、千葉11区(たがや亮)、愛知15区(すがや竜)、愛知10区(安井みさこ)、大阪5区(大石あきこ)、京都2区(中たつや)、大阪7区(西川ひろき)、兵庫8区(つじ恵)、滋賀3区(高井たかし)、山口4区(竹村かつし)、福岡8区(大島九州男)⁽³⁾。
今回の衆院選では、2021年9月8日に、立憲民主党、共産党、社民党、れいわ新選組の野党4党と市民連合(安保法制の廃止と立憲主義の回復を求める市民連合)が、「衆議院総選挙における野党共通政策」を締結している⁽⁴⁾。
市民連合は、この間、野党共闘の動きを主導してきた⁽⁵⁾。野党共闘の場合、各小選挙区には、上記4党から一人だけが候補者として擁立される。
従って、れいわ新選組が候補者を擁立している上記の小選挙区全てに、立憲民主党、共産党、社民党のいずれかが一人でも候補者を立てていれば、れいわ新選組の野党統一候補は1人もいないと言える。
しかし、山口4区には立憲民主党、共産党、社民党のいずれも候補者を立てておらず、竹村かつし氏がれいわ新選組の野党統一候補者となっている状態であることが分かった(*上記表参照)。
れいわ新選組の回答
そこで、Waseggの調査担当者は10月20日にメールで、れいわ新選組担当者に「(山本氏の)発言は、どのような根拠に基づいてなされたものでしょうか」「竹村かつし氏は『野党統一候補』ではないというご認識でしょうか」と問い合わせ、以下の回答を得た。
“市民連合 さんの野党統一候補の配布資料に、山口4区竹村かつしは入っておりませんでした。”
市民連合の回答
この回答を受けて、Waseggの調査担当者が10月21日にメールで、市民連合担当者に「10月15日『新しい船をだそう!市民と野党のキックオフ@東京開催』の時点で、市民連合さんが配布されていた野党統一候補の配布資料に、山口4区竹村かつし氏のお名前は記載されていたのでしょうか。また、現時点において山口4区の竹村かつし氏は野党統一候補として扱われていますでしょうか」と問い合わせたところ、以下の回答を得た。
“「市民と野党をつなぐ会@東京」(市民連合東京)の集まりに私ども「市民連合」が全国の野党統一候補の資料は配布しておりません。「市民連合東京」が配布されていた のは「東京選挙区における立憲野党候補者リスト(予定候補者も含む)」です”
“市民連合は山口4区の竹村克司さん(れいわ)を「野党統一候補」として受け止めています。”
市民連合の野党統一候補資料には竹村かつし氏の名前がない、というれいわ新選組の回答と野党統一候補の資料は配布していないという市民連合の回答には食い違いが生じている。また、市民連合は竹村かつし氏を野党統一候補として認識しており、この点にも山本代表の発言とのズレがある。
山本代表が、市民連合が配布した「東京選挙区における立憲野党候補者リスト(予定候補者も含む)」を読み、れいわ新選組の候補者が野党統一候補として出られる小選挙区は1つもないと勘違いした可能性はあるが、断定することはできない。
従って、れいわ新選組が野党統一候補として出られる所は1ヶ所もないは根拠不明であると判定した。
脚注
(1)山本太郎、「新しい船をだそう!市民と野党のキックオフ@東京開催」、10月15日(動画アップロード日は10月16日)
https://www.youtube.com/watch?v=-t7z0cNkdzw(対象箇所は6:36~)
(2)立川談四楼、Twitter、2021年10月16日
https://twitter.com/Dgoutokuji/status/1449220696291172357?s=20
(3)れいわ新選組、「衆院選2021公認候補」
https://reiwa-shinsengumi.com/member/
(4)NHK、「野党4党 衆院選で訴える共通政策 市民グループと締結」、2021年9月8日
https://www3.nhk.or.jp/news/html/20210908/k10013249411000.html
(5)東京新聞、「市民連合がオンラインイベント『政権交代の実現を』入管問題を指摘」、2021年10月8日
https://www.tokyo-np.co.jp/article/135755
(6)立憲民主党、「公認候補者一覧」
https://change2021.cdp-japan.jp/members/
(7)日本共産党、「衆議院小選挙区候補」
https://www.jcp.or.jp/web_senkyo/2020syu-election.html#_fukuoka
(8)社民党、「公認候補」
https://sdp.or.jp/2021syugiin-election/
*最終アクセス日はいずれも2021年10月19日
運営責任者=瀬川 至朗
調査・記事担当者=西部悠大、鳥尾祐太
WaseggはFIJ(ファクトチェック・イニシアティブ)のメディアパートナーであり、この記事ではFIJのClaim Monitorの情報を活用しています。
レーティング(判定)はFIJが策定した基準(下記参照)を用いています。