【ファクトチェック】「石油・天然ガスの9割近くは中東から」は不正確。2020年1月16日Dappiが拡散


トップの画像はTwitterより
対象言説

2020年1月16日、TwitterアカウントDappi(@dappi2019)が日本の資源輸入に関して以下のツイート⑴をした。

河野克俊「野党等が『自衛隊派遣反対』と批判するが、危険を冒してる民間タンカーには触れない」

有本香「日本の電気は殆どが火力発電で石油・天然ガスの9割近くは中東から。野党等はここを隠し『自衛官の命が』と批判するから派遣を誤解する人がでる」

野党は批判したいだけで日本のことを考えてない

(Twitterより)
(Twitterより)

これは2020年1月16日に配信されたインターネット番組『真相深入り!虎ノ門ニュース』に出演した、河野克俊氏(前統合幕僚長)と有本香氏(ジャーナリスト)の発言から以下の部分を抜粋したものである。

有本香「この電気は今もう要するに原発はほとんど動いていない訳だから、ほぼほぼほとんどが火力発電であると。つまり石油とか天然ガス、こういうものが無かったら動きませんと。まあ一部石炭もあるかもしれないけど。そうするとね、その石油とか天然ガス、あるいはまあ通常生活ではガソリンも使えばね、車のガソリンも使えば、他にもいろいろあるけれども、これ一体どこから来ているのかと言えば、まあ8割と言いたいけど9割近く中東から来ているんですよね。このタンカーが毎日日本に油を運んできます」。

今回は、「日本は『石油・天然ガスの9割近くは中東から』輸入している」という言説をファクトチェックの対象とする。

選定理由

Dappi(@dappi2019)は約17.8万フォロワーがいるアカウントで影響力が高い。このツイートも2022年3月10日現在、3092件のリツイート、81引用リツイート、8157いいねを獲得している。また、このツイートに添付された動画(真相深入り!虎ノ門ニュースを切り取ったもの)は7.2万回以上表示されており、検証する必要があると考えた。

判定
日本は「石油・天然ガスの9割近くは中東から」輸入している=不正確
判定理由
石油は約89%を中東から輸入しているが、天然ガスは約18%だけ

経済産業省がHP上で公表している資源・エネルギー統計年報(石油)⑵によると、当該言説がツイートされた前年の2019年に、日本は原油を計175,488,885キロリットル輸入しているが、このうち中東から輸入された分は156,043,026キロリットルである。したがって、2019年の総原油輸入量に対する中東からの輸入量の割合は、約89%となる。

一方、財務省の貿易統計⑶によると、2019年の液化天然ガスの輸入総量が77327千トンに対し、うち中東から輸入された分は13797千トンである。したがって、2019年の総液化天然ガス輸入量に対する中東からの輸入量の割合は、約18%である。

つまり、石油は9割近く中東から輸入しているが、天然ガスは2割にも満たない。したがって、日本は「石油・天然ガスの9割近くは中東から」輸入しているという言説は不正確であると判定した。

脚注

(1)Dappi、Twitter、2020年1月16日
https://twitter.com/dappi2019/status/1217667714275143680?s=20&t=eKAZGjBPQNJvjbjRyN1uMQ

(2)経済産業省、『資源・エネルギー統計年報(石油)令和1年』

https://www.meti.go.jp/statistics/tyo/sekiyuka/pdf/h2dhhpe2019k.pdf

(3)財務省貿易統計、『報道発表 令和元年分(確定)』、2020年3月13日
https://www.customs.go.jp/toukei/shinbun/trade-st/2019/2019_117.pdf

*最終アクセス日はいずれも2022年3月10日

運営責任者=瀬川 至朗

調査・記事担当者=後藤直哉、藤澤宏壮

WaseggはFIJ(ファクトチェック・イニシアティブ)のメディアパートナーであり、この記事ではFIJのClaim Monitorの情報を活用しています。

レーティング(判定)はFIJが策定した基準(下記参照)を用いています。

FIJレーティング