【ファクトチェック】「自公維が勝つと消費税19%」は根拠不明。ネットで拡散
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トップの画像は2021年10月18日、日本記者クラブで行われた党首討論会の様子=©AFP/ISSEI KATO
対象言説
インターネット上で、「衆議院選挙において自民党・公明党・日本維新の会が勝つと消費税が19%になる」といった情報が拡散している。以下のツイートは、10月28日時点で1万リツイート・2.3万いいねを獲得している。
「『投票行かない、政治に興味ない』って人には難しい話は全部すっ飛ばして『ちょっと、自公維が勝つと消費税19%になるってよー』がたぶん一番効く気がする」
今回は、「自民党・公明党・日本維新の会が勝つと消費税が19%に引き上げられる」という言説をファクトチェック対象とする。
選定理由
先述したようにこの言説は、インターネット上で広く拡散している。また当該ツイートのリプライ欄では「凄く納得しました。」「それが一番わかり易いです」など、この投稿を事実であると認識し、賛同する意見も多く見られる。一方で、「19%になるというソースはどこですか?」「嘘はダメでしょ」といった指摘も散見された。
衆院選の投開票を10月31日に控えている中⁽¹⁾、こうした投稿は投票行動に影響を与える可能性がある。本当に「自民党・公明党・日本維新の会が勝つと消費税が19%に引き上げられる」という事実はあるのか。検証することにした。
判定
「自民党・公明党・日本維新の会が勝つと消費税が19%に引き上げられる」=根拠不明
判定理由
自民・公明・維新 いずれも消費税増税には言及していない
上記のツイートで言及されている3党の消費税に対する姿勢は、以下の通りだ。
■自民党
自民党・岸田文雄首相は、10月18日に行われた日本記者クラブ主催の党首討論会において、次のように発言している。
「少なくとも、今の段階で消費税を触ることは考えるべきではないと私は考えています⁽²⁾」
つまり現時点で増税は考えておらず、現状維持の姿勢を貫く方針だ。従って、衆議院選挙で自民党が勝利した結果として消費税が19%になるという根拠は存在しない。
■公明党
公明党は今回の衆議院選挙において、政権公約として消費税政策には触れていない。さらに代表である山口那津男氏も、消費税引き上げに言及していない⁽³⁾。従って公明党の勝利により、消費税が19%になると断定することはできない。
■日本維新の会
日本維新の会が発表した衆議院選挙の公約には、
「長期低迷とコロナ禍を打破するため、2年(目安)に期間を限定した消費税5%への引き下げを断行します。引き下げ期間終了については経済状況を考慮し、将来的な地方税化と税制改革を併せて検討します。」
との記述がある⁽⁴⁾。ゆえに日本維新の会が勝利した際、消費税が19%に引き上げられると言うことはできない。
消費税19%は経済同友会とOECDが提示した数値
ツイートにある「19%」という数値だが、これは経済同友会が2021年5月11日に発表した試算結果⁽⁵⁾に端を発している可能性がある。経済同友会の試算によれば、国と地方の債務残高の対GDP(国内総生産)の比率を「毎年下げていくには、消費税率を26~34年度に毎年1%ずつ引き上げて19%にする必要がある」⁽⁶⁾という。
しかし、この試算内容も現在の与党(自民党・公明党)が勝利した場合に消費税を19%に引き上げるということを裏付けるものではない。
また「19%」は、2018年4月13日に経済協力開発機構(OECD)事務総長が提言した数値でもある。朝日新聞デジタルによると、当時のOECD事務総長であったグリア氏が自民党の麻生太郎財務相(当時)と会談し、「日本の消費税率は将来的に、OECDの加盟国平均の19%程度まで段階的に引き上げる必要がある」⁽⁷⁾と述べた。しかしこれはOECD事務総長の提言に過ぎず、有力な根拠とはならない。
「消費税が19%になる」というのは将来の予測であり、誤りだと証明するのは難しい。一方で、「19%」という提言や試算結果はあるものの、自民・公明・維新の各党は、そうした内容の公約はしておらず、根拠はないといえる。
従って、「自民党・公明党・日本維新の会が勝つと消費税が19%に引き上げられる」という言説は、根拠不明であると判定した。
脚注
(1)NHK、「政府 衆院選の日程 今月19日公示 31日投開票に 臨時閣議で決定」、2021年10月14日
https://www3.nhk.or.jp/news/html/20211014/k10013306821000.html
(2)毎日新聞(Youtubeチャンネル)、【ノーカット】党首討論会 日本記者クラブ、2021年10月18日
(3)日本経済新聞、「消費税、自公は触れず 立民など『5%に減税』」、2021年10月21日
https://www.nikkei.com/article/DGXZQOUA1940D0Z11C21A0000000/
(4)日本維新の会、「衆院選マニフェスト2021」
https://o-ishin.jp/shuin2021/ishin_manifesto.pdf
(5)公営記者団法人経済同友会、「持続可能な財政構造の実現に向けて〜長期の経済財政試算を踏まえて〜」、2021年5月11日
https://www.doyukai.or.jp/policyproposals/uploads/docs/210511b.pdf?210513
(6)朝日新聞デジタル、「『PB、2050年度も赤字のまま』 経済同友会試算」、2021年5月12日
https://digital.asahi.com/articles/ASP5C6V33P5CULFA019.html
(7)朝日新聞デジタル、「『消費税19%に』 OECD事務総長、麻生氏に提言」、2018年4月13日
https://www.asahi.com/amp/articles/ASL4F5JR8L4FULFA02B.html
*最終アクセス日はいずれも2021年10月30日
運営責任者=瀬川 至朗
調査・記事担当者=佐々木 彩佳、後藤直哉、鳥尾祐太
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