ワセメシの代表格「三品食堂」― コロナ下を生きる ―


2020年度、早稲田大学では全授業が対面からオンラインに移行した。これにより、早稲田大学周辺の歴史ある飲食店、通称「ワセメシ」の多くも大打撃を受けた。その中の一つ、56年の長い歴史を持つ「三品食堂」(ⅰ)の店主である北上昌夫さん(75)にコロナ禍での営業の苦悩について、話を聞いた。
トップの写真は三品食堂の外観=2021年6月30日、中山大輝撮影
三品食堂の苦悩

「早稲田の街は学生街だから、大学がないとやっていけないよね」。56年間ワセメシとしての歴史を刻んできた三品食堂だが、新型コロナウィルス感染症の拡大により、2020年の4月と5月は店を休業した。6月に営業を再開したが、オンライン授業により学生が大学から遠ざかり、売り上げは従来の2、3割に減少してしまった。
10月以降は、対面授業が一部再開したことや早稲田祭の影響で、一時的に売り上げが4割ほどまで回復したという。しかし、経営が苦しいことには変わりなく、2020年度は全体として苦悩の年であった。

回復の兆し

2021年度になり、早稲田大学が対面授業を7割にまで戻すと宣言したことで、早稲田の街に、少しずつ活気が戻ってきた。しかし、コロナ禍であることに変わりはなく、三品食堂では感染対策のため、座席数を従来の19席から13席に減らして営業している。この影響で、回転率が悪くなり店の前に行列ができるようになってしまったそうだ。

しかし、その行列を見てテイクアウトのサービスを使う客もいるため、売り上げは7、8割にまで回復した。ワクチン接種も進み出し、従来の売り上げまでの回復の兆しが見えてきた。「いずれは終息して元通りの生活が戻ってくるから、今やるべきことに尽力する。それまでは、お客さんに我慢して待ってもらうしかないね」。北上さんはそう笑って答えた。

三品食堂の代表メニュー 赤玉ミックス =2020年10月12日、中山大輝撮影 
三品食堂の代表メニュー 赤玉ミックス =2020年10月12日、中山大輝撮影
乗り越えることができた理由

こんな状況でも、早稲田のOB・OGの力が大きくて、とても助けられたね」(北上さん)。早稲田大学のOB・OGが三品食堂を含む早稲田の街を心配してくれて、「わせまちマルシェ」(ⅱ)というECサイトを立ち上げた。このサイトを通じて、三品食堂はネット販売を2020年10月まで行い、売り上げを伸ばすことに成功した。

また、テイクアウトや「わせくまデリ」(ⅲ)を通じたデリバリーも新たなサービスとして始めた。わせくまデリは、学生が料理をお客さんに運ぶサービスで、デリバリーの手数料300円と賄いがアルバイトの報酬として学生に支払われる仕組みになっている。「早稲田は、大学と街と学生が一体となっていて、相互に依存し合ってるんだよね」。

コロナ禍の苦悩を乗り越えられた最大の理由は、「早稲田の温かさ」にあると北上さんは言う。大学を卒業しても街を心配してくれるOB・OGの存在、ワセメシという文化を残そうとクラウドファンディングを行ったり、店に足を運ぶ学生、他大学の多くがオンライン授業を行っている中、対面授業を行った早稲田大学、「これらが一体となっているからこそ、こんな事態になっても救われたし、頑張ろうと思えたんだよね」。

三品食堂のこれから

コロナ禍の先行きを見通すのは難しい。仮にコロナ禍が終息したとしても、早稲田大学では授業のオンライン化が一部組み込まれようとしている=Waseda Vision150Annual Report (ⅳ)。北上さんは、これにより、客足が減ることを懸念している。そこでコロナ禍が終息したら、学生だけでなく、一般客をターゲットにし、早稲田の街の日帰りツアーなどを行うなどして「早稲田の街を一般のお客さんを巻き込み大きくして盛り上げていきたい」と語った。

「街も頑張っているから、今は辛抱。共に頑張ろう!」。

<注>

(ⅰ)三品食堂_
https://shinjuku-loupe.info/p/member/330
(ⅱ)わせまちマルシェ_
https://wasemachi-marche.stores.jp/
(ⅲ)わせくまデリ_
http://wasedaokuma.tokyo/event09.html
(ⅳ)Waseda Vision 150Annual Report2020
https://www.waseda.jp/inst/vision150/assets/uploads/2021/08/2020nendohoukokusyo.pdf