学生起業家インタビュー 自分の手で教育格差を是正する!


近年「学生起業」のムーブメントが盛り上がりを見せています。その背景としては、政府が成長戦略の一つとして「産業の新陳代謝とベンチャーの加速」を推進していることや、インターネットの普及で起業のハードルが低くなっていることなどが挙げられます。しかし、「学生起業」はまだまだ身近とは言えません。そこで今回、早稲田大学に在籍(休学中)しながら、自分の事業を立ち上げた土井万智さん(写真)に学生起業についてインタビューをしました。(取材・写真=横田渉悟)

 

経済格差による教育の格差をなくしたい

 

-土井さんはikstudie(イクスタ)という高校生向けのWebメディアを運営されています。どのような事業なのですか?

独学の大学受験生が、自分の志望校に合格できるようなサービスを展開しています。メディアで大学受験に役立つ記事を発信したり、受験生の相談にメッセージで回答したりすることが主なサービスですね。

 

-始めようと思ったきっかけは?

元々東進ハイスクールという大手予備校で働いていて、そこで働いていく中で、だいたい一人の生徒が年間70~120万の授業料がかかるという実情を目の当たりにしました。金銭的な理由で入塾を諦めざるを得ない子がたくさんいるのを見て、これは良くないと思ったのがきっかけですね。

 

-有名大学に通っている人の親は大体お金持ちって現状がありますよね

その現状をまさに改善したいと思っています。大学に入ればその後の人生のキャリアアップにつながりますし、その後の人生の選択肢が増えるという意味でポジティブな影響が大きいことは間違いないのですが、この機会をお金で制限されてしまうのは悲しいことですよね。長い目で見たら、日本にとっても大きな損失になります。自分の家庭が金銭的に恵まれていないというだけで優秀な人材が埋もれてしまうのですから。少しでもそういった環境を改善できるようなサービスを作ろうということで、僕の教育学部のクラスの友達と一緒にサービスを立ち上げました。

 

起業は手段でしかなかった

 

-なぜ学生のうちに?

そもそも起業するのに立場とか、そのときのポジションは関係ないと思っています。結果として起業になったのですが、問題を解決するためにたまたま起業になっただけで、起業はあくまで手段でしかなかったですね。大学3年生ぐらいのときに読書会っていうのを友達とやっていて、その読書会の中で教育の話になり、そこから予備校の問題点とか大学受験の実態の話へと発展していきました。そこで、独学の受験生たちにとって本当に役に立つサービスが、今の日本にあるのかって考えたときに、ないなって思って。じゃあ今すぐ始めよう、って。スマホが普及し始めていたこともあって、スマホだったら高校生でも自分で自由に情報を扱えるなって、このタイミングだなっていうのもありました。

 

-不安は?周囲の反対等もあったと思うのですが、、、

たしかに親には反対されました。反対する理由もよくわかるのですが、結局は自分の人生です。その場の限りの突発的なものではなくて、しっかりと考えた上での選択だったので、親には納得してもらえるまで話しました。周りの目もたしかに「学歴を捨てて」だとか、「大企業に入るチャンスがなくなる」だとか冷たかったですね。ただ、学歴だとか大手企業へのパスだとかは早稲田基準で、すでに持っている人からすると「失う」っていう怖さがあるのかもしれないですけど、人間そもそものことを考えたときに、こういう肩書きってあるようでないものなので、そこに関して全くこだわりはなかったですね。

 

-iksutudieの今後の展開は?

イクスタの目標に関しては経済格差による教育格差をなくすことで、みんなができるだけ均等に機会を得ることができるようになって人生の選択肢を広く持てるようにすることがビジョンであるので、イクスタの中で情報発信していくのを続ける中で、リアルイベント等の1対1で高校生に人生ってどういうふうに考えればいいのかだとか、そういうことを考える機会を与えるイベントをやっていきたいですね。全国には同じようなことを考えている学生団体とかNPOの方もたくさんいるので、そういう人たちを巻き込んで、教育格差を是正していくムーブメントを起こしていきたいと考えています。

 

早慶生はプライドを捨てろ!

 

-最近、学生起業のムーブメントが高まっていますよね

そうですね。ただファッション起業の人が多い気もしています。「とりあえず起業しとけばかっこいいじゃん!」みたいな。ベンチャーの意義って世の中の課題を解決していくことだと思うので、起業の目的意識が自分に向いている人はイケてないと思います。起業するための起業は、はっきり言ってあまりかっこ良くはないと思いますね。普段は周りのことはあまり気にしていないので詳しくはわかりませんが。そして、「人にとっての幸せは何なのか」という自分の中の哲学を持っていないと、いいサービスというか世の中に影響を与えるようなサービスを作れないと思うので、生きている意味や、みんながどこに向かうべきかという哲学は考えていないといけないと思います。

 

-その他、一般的な大学生に思うところはありますか?

う〜ん、あまり一般的な大学生に関しては詳しくないので、早慶生に限定すると、「調子に乗んな」ってことですね(笑)。

 

-過激な発言ですね、、、(笑)その真意は?

要はプライドを捨てろってことです。早稲田とか慶應だとかいい大学に入っている学生を見ていて思うのは、学歴に対するプライドが高すぎるってことですね。この大学に入っている自分は他の人より偉いんだって深層心理で思っている人がすごく多い。でも僕には、それは自分の自信のなさの表れにしか見えません。自分に自信がないから学歴という鎧で自分を必死に守っている。学歴が高いからといって調子に乗んなって常々思いますね。

 

-う〜ん、耳が痛いご指摘ですね、、、

ははは。とは言え、もちろん学歴も自分の努力の結果ではあると思いますし、受験勉強を頑張った自分のことは素直に認めてあげてほしいですね。ただ学歴に執着はしないでほしい。自分の周囲は成功している人ほど、人間対人間的な考え方&コミュニケーションをしているんですよ。学歴というのはその人の一つの側面でしかなくて、薄っぺらいものでしかないんです。ありきたりですけど、「人間力」をもっと磨いていってほしいですね。

 

-どうすれば「人間力」は磨かれるのでしょう?

本当に自分自身を好きでいられるような、生きていて良かったって思えるような自分を発見する必要があると思います。その発見をするためには、自分をしっかりと見つめる時間を取ることが大事ですね。ヒントは今までの自分の経験とか、今の自分の素直な感情とかあらゆる所に転がっていると思います。そして、そこで発見した自分の興味だとか得意なことだとかを、他人の目を気にしないで実行してほしい。早大生はもともとポテンシャルが高い人が多いと思うので、学歴などに縛られない広い視野を持つことができれば、もっと社会で活躍できるのではないかと思います。

 

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