【ファクトチェック】立憲民主党、「少し前まで『早くGoToをやれと』騒いでた」はミスリード。Dappiが2020年7月22日に投稿
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トップの画像はTwitterより
対象言説
2020年7月22日、Dappi(@dappi2019)は以下の投稿⑴をしている。
「立憲 安住淳「GoToで感染拡大なら内閣総辞職しろ!」 少し前まで『早くGoToをやれと』騒いでたのにこの言いように呆れる。立憲民主党は本当に自分達の言動について無責任にも程がある。 後出し批判してる暇があるなら案を出せ」
GoToトラベルは、「失われた旅行需要の回復や旅行中における地域の観光関連消費の喚起を図るとともに、ウィズコロナ の時代における『安全で安心な旅のスタイル」を普及・定着させる⑵』ことを目的とした観光庁の事業である。2020年7月22日、国内旅行の宿泊・日帰り旅行代金を35%割り引くキャンペーンが開始された。
同日、立憲民主党の安住淳国対委員長がコロナウイルスの感染拡大につながることを懸念し、「感染者が地方で増えたら政治責任を取っていただく。(内閣)総辞職に値する⑶」と述べた事を受け、Dappiが上記のツイートを行っている。
本記事では、この投稿の内、「 (立憲民主党は)少し前まで『早くGoToをやれと』騒いでた」という言説を検証する。
選定理由
Dappi(@dappi2019)は約17.8万フォロワーがいるアカウントで影響力が高い。このツイートも2022年3月10日現在、7453件のリツイート、512引用リツイート、1.9万いいねを獲得している。一方で、本ツイートに反論しているツイートも見受けられ、情報が錯綜している状況だ。したがって、ファクトチェックを行い、事実を明らかにする意義があると考えた。
判定
立憲は「 少し前まで『早くGoToをやれと』騒いでた」=ミスリード
判定理由
立憲民主党は同政策の早期実施を一貫して求めていたわけではない
「少し前まで『早くGoToをやれと』騒いでた」というDappiのツイートは、「本ツイートがなされる少し前まで、一貫して立憲民主党が同政策の早期実施を求めていた」という趣旨の発言と捉えられる可能性がある。GoToキャンペーンは、2020年4月に提出された令和2年度補正予算案の中で示されたものであるため⑷、2020年4月からDappiのツイートがなされた7月22日までの間の立憲民主党の姿勢について調べた。
立憲民主党所属議員は、同政策の実施時期に対して以下のように発言している。
「この一・七兆(GoToキャンペーン事業の予算案額)だけは今じゃない」(注釈:筆者)「今必要じゃないと言っているんです。それよりも事業を支援しましょうよ、立っていられるだけの⑸」。
「ゴー・ツー・キャンペーン事業。必要であることは私も重々承知ですが、少なくとも今じゃないだろうと、こう思うわけであります⑹」。
1つ目の発言は、2020年4月29日の参議院予算委員会における蓮舫議員のものである。また、2つ目は、2020年5月25日の参議院決算委員会における小沼巧議員の発言である。立憲民主党はGoToキャンペーン事業の実施のタイミングについて批判しており、この時点では同政策の早期実施を求めていたわけではない。
立憲民主党議員のGoToキャンペーン事業に対する姿勢の変化
一方で、立憲民主党所属議員がGoToキャンペーンの早期実施を求める場面はあった。2020年5月28日の参議院国土交通委員会の中で、立憲民主党所属である小沢雅仁議員はGoToキャンペーン事業について、「一日も早いこの事業の実施を強くお願い」すると述べている⑺。このような同政策に対する姿勢の変化は、5月25日の全国における緊急事態宣言解除の動きに呼応するものと見られる⑻。
5月28日以降、議会では、実施方法や委託費へと議論の争点が移るが、7月16日には再び実施の有無が議題に挙がった。7月15日の朝日新聞によると、当時直近1週間の東京都内における新規感染は4月の感染拡大期を上回っていた⑼。このような感染拡大傾向を鑑み、立憲民主党所属の杉本秀哉議員は、7月16日の参議院予算委員会で次のように述べた。
「知事会、先日、限定的なキャンペーンを求める緊急提言出しています。昨日、青森県のむつ市長、感染が拡大したら政府による人災だと、こういうふうにはっきりおっしゃっている。『#GoToキャンペーンを中止してください』、これがトレンド入りしている。
(中略)今でも東京由来の感染者が地方で増えているんですよ。昨日、長野県でも、新宿のあのシアターに行った方が、女性の方が感染発見されたんです。そして、濃厚接触者の方もいるんですね。こういう状況なんですよ。もし離島で感染が起きたらどうするんですか。医療体制が極めて厳しい地方で起きたらどうするんですか。観光庁が責任取るんですか。誰が責任取るんですか⑽」。
以上のことから分かるように、確かに立憲民主党の所属議員がGo Toキャンペーンの早期実施を求めていた時期はあった。しかし、それは全国において緊急事態宣言が解除されるタイミングでのことであり、他の時期においては一貫してGo Toキャンペーンに批判的な態度を見せていた。
Dappiのツイートは、「本ツイートがなされる少し前まで、一貫して立憲民主党が同政策の早期実施を求めていた」という趣旨との印象を与えるものであり、誤解の余地が大きい。
したがって、Dappiの「 (立憲民主党は)少し前まで『早くGoToをやれと』騒いでた」という言説はミスリードであると判定した。
立憲民主党の回答
短期間での姿勢の変化について、2022年1月14日立憲民主党にメールで取材を行ったところ、同20日に回答を得た。立憲民主党は「当日の委員会での議題が異なり、また感染状況も日々変化をする中で、3者(蓮舫氏、小沢氏、杉本氏)の質疑の対応が『否定的』か『肯定的』か比較するのは困難(注:筆者)」とし、「与党を中心とする賛成多数で可決されて以降は、 執行の速度やその方法などについて、 行政監視機能を担う野党はチェックを致します」と述べた。
脚注
(1)Dappi、Twitter、2020年7月22日
https://twitter.com/dappi2019/status/1285812449493434368
(2)観光庁、『Go To トラベル事業』、2020年11月12日
https://www.mlit.go.jp/kankocho/content/001462311.pdf
(2)産経ニュース、『立民・安住淳国対委員長「GoToで感染拡大なら内閣総辞職を」』、2020年7月22日
https://www.sankei.com/article/20200722-3KCS7FQBO5LODMKZXYUHBN7RJQ/
(4)国土交通省、「令和2年度国土交通省関係補正予算の概要」、2020年4月7日
https://www.mlit.go.jp/report/press/content/001339698.pdf
(5)国会会議事録、「第201回国会 参議院 予算委員会 第17号(令和2年4月29日)」
https://kokkai.ndl.go.jp/txt/120115261X01720200429
(6)国会議事録、「第201回国会 参議院 決算委員会 第6号(令和2年5月25日)」
https://kokkai.ndl.go.jp/txt/120114103X00620200525
(7)国会議事録、「上第201回国会 参議院 国土交通委員会 第16号」(令和2年5月28日)
https://kokkai.ndl.go.jp/txt/120114319X01620200528
(8)首相官邸ホームページ「令和2年5月25日 新型コロナウイルス感染症対策本部(第36回)」
https://www.kantei.go.jp/jp/98_abe/actions/202005/25corona.html
(9)朝日新聞、「『東京はもう第2波突入』 都の対応にいら立つ区市町村」、2020年7月15日
https://digital.asahi.com/articles/ASN7G7GGWN7GUTIL032.html
(10)国会会議録「第201回国会 参議院 予算委員会 閉会後第1号(令和2年7月16日)」
https://kokkai.ndl.go.jp/txt/120115261X00120200716
*文中の議員の所属については、以下を参照しています。
立憲民主党ホームページ「議員情報」
https://cdp-japan.jp/members/all
*最終アクセス日はいずれも2022年3月10日
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調査・記事担当者=酒井春
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