動物保護の新しいかたち
「保護猫カフェ」きゃりこの取り組み

 

現在、減少傾向にはあるものの、全国で未だ5万5千匹(2016年度)もの犬猫が殺処分によって命を奪われている。(ⅰ)行政もこうした状況に問題意識を感じいくつかの対応をとっているが、そのほとんどはボランティア団体に頼っているのが現状だ。そんな中、新たな動物保護の形として「保護猫カフェ」が注目を集めている。(取材、写真=船本潤平、神山みさき、横田渉悟)

きゃりこの日常

 きゃりこ(ⅱ)はもともと吉祥寺と新宿に店を構える一般的な猫カフェだった。吉祥寺店の移転が決まり、2017年6月、旧店のスペースに保護猫カフェ専門の武蔵野店をオープンした。きゃりこには1日に最大40人、月に600人ほどの来客がある。
cats1 私たちが取材をして気づいたのは、きゃりこの猫は保護された猫とは思えないほどきれいな毛並みをしているということ。きゃりこの店員の松村早紀さんによると、店に来た当初はどの猫も今ほどの毛並みではなかった。それでも店員の愛情を受け、客にも猫にとってストレスの少ない環境にすることを徹底してもらうことで猫の毛並みはみるみるうちに良くなっていったという。
きゃりこの猫は、他の一般的な猫カフェに比べて人懐っこい。普通の猫カフェだと猫の入れ替わりがほとんどないため、猫が人間のいる状況に慣れてしまい、人間に関心がなくなっていくことが多いが、きゃりこにいる猫は人の方にどんどん近づいていく。時には膝の上に猫が乗ってくることもあり、そうなると多くの来客は猫に心を奪われてしまうという。

保護猫カフェとは何か

cats3
保護猫カフェは一般的な猫カフェとは異なり、猫の保護を目的としている。取材を行った保護猫カフェきゃりこ(以下、きゃりこ)は山梨にあるNPO団体のリトルキャッツ(ⅲ)から猫を受け取り、猫はきゃりこで里親が決まるのを待つ。しかし客がある猫を気に入ったからといってすぐに引き取れるわけではない。希望者にはまず1週間、トライアル期間として猫と一緒に暮らす期間が与えられ、そこで猫との相性を確かめる。そして飼い主としての適性があるかどうかをきゃりこ側が審査したうえで最終的な引き取りとなる。このような過程を経て月に2~3匹の猫が里親の下へと引き取られる。
保護猫カフェにはその形態自体にも利点がある。例えばペットショップなら、受け取り手が確認できるのはゲージの中にいる猫の姿のみである。それに対して、保護猫カフェでは自由に動き回る猫の自然な姿を確認することができる。猫の本来の姿を受け取り手が知ることは、のちに引き取られることになったとき、猫が飼い主と幸せな生活を送るためにも重要なことである。

動物(犬猫)保護の現状

 

<全国の犬・猫の殺処分数の推移(環境省)(ⅳ)>

cats4-1
動物の殺処分それ自体は、過去10年で大きく減少傾向にある。2012年に動物愛護法が改正されたことがその大きな要因である(Ⅴ)が、その内容は飼い主の安易な理由(「可愛くなくなった」等)による引き取りの申し出を、保健所が拒否できるようになったというものである。一般的に飼い主の事情で飼えなくなった猫、犬等は一旦保健所で保管され、そこで引き取り手の無くなった犬や猫は殺処分されてしまう。
私たちは行政による犬猫の保護、殺処分の実態を知るため、東京都動物愛護相談センターに取材を行った。同センターの栗原八千代さんによると、2016年度に東京都で致死処分となった犬猫は597匹だったが、そのうち588匹は成猫、子猫であったという。この現状を受けて、行政でも一般の人々にセンターで保護した猫を譲り渡す譲渡会や、飼い主への適正飼育指導を行うなどの活動を行っている。しかし、センターから猫を引き取る愛護団体も猫が飽和状態にあり、このような策のみでは解決は難しい。

動物愛護相談センターの高橋さん(左)と栗原さん(右)
動物愛護相談センターの高橋さん(左)と栗原さん(右)

 しかし、そのような状況を打破しようと民間でも新たな保護の形が生まれ始めている。例えば、SNSサイトで里親の募集を行う活動や、動物保護に関連した活動をするためにクラウドファンディングを行う活動がある。そのような新たな試みの中でも、保護猫カフェは複数のメディアに取り上げられる等、徐々に注目を集めている。

保護猫カフェの課題

 保護猫カフェであるきゃりこ武蔵野店がオープンしたのは2017年5月のことだ。「保護猫カフェ」としての知名度はまだ高くない。松村さんは「保護猫カフェ」という言葉を世間に浸透させることができれば、保護猫カフェの地位も今以上に高まり、そしてもし猫カフェが直接猫を引き取ることができるようになれば、より多くの猫を保護できると考えている。不用意に猫を引き取る権限を拡大すると、実態のない団体が保護名目で猫を引き取り、動物虐待に繋がるケースも考えられる。実際に里親を名乗って、動物を転売、虐待したり、動物実験に使うような、いわば「里親詐欺」とも言える事例も確認されている。保護猫カフェが多くの猫の保護や殺処分の減少に貢献するためには、引き取りの新たな制度を創設することが重要である。
しかし、いくら保護猫カフェが活動を展開したところで、最終的に猫を引き取るのは一般市民であることには変わりない。多くの猫を救うために必要なのは、一般市民が猫を保護しようとするモラルをもってこの問題と向き合うことである。

さらなる保護活動に向けて

 昨年2月、埼玉県深谷市の税理士が10匹以上の猫を虐待し、その様子を撮影したものを匿名のファイル共有サイトに投稿したという事件が発生した。(ⅵ)容疑者はすでに逮捕されているが、逮捕された男は取り調べに対し、「法律違反とは考えていない」といった趣旨の発言をした。野良猫を保護しようとする人々がいる一方で、野良猫を邪魔だと思う人がいるのもまた事実である。
そんな中で近年、「地域猫」(ⅶ)という言葉が広がりを見せている。地域猫活動とは地域に暮らす野良猫がその猫一代限りの生を全うできるように、地域に住む人々がエサをあげたりふん尿の処理、不妊去勢手術の徹底をする活動である。松村さんはこの言葉の広がりが、人々の動物保護に対する意識を変えているとみている。
地域猫の活動、保護猫カフェ・・・。民間の活動のみではすべての野良猫や野良犬を完全に管理し、殺処分をなくすことは困難なことかもしれないが、このような地道な活動の継続が問題を解決するために必要不可欠なことではないだろうか。

(注)
(ⅰ)環境省ホームページ 「犬・猫の引取り及び負傷動物の収容状況」(平成28年度)
http://www.env.go.jp/nature/dobutsu/aigo/2_data/statistics/dog-cat.html
(2018/01/27参照)

(ⅱ)猫カフェ きゃりこ武蔵野店 ホームページ
http://catcafe.jp/shop_musashino.html
(2018/01/27参照)

(ⅲ)山梨県犬猫救助ポータル リトルキャッツ http://littlecats.jp/
(2018/01/27参照)

(ⅳ)環境省ホームページ 「犬・猫の引取り及び負傷動物の収容状況」(平成28年度)
https://www.env.go.jp/nature/dobutsu/aigo/2_data/statistics/dog-cat.html
(2018/01/29参照)

(Ⅴ)環境省ホームページ 「動物愛護法 平成24年度に行われた法改正の内容」
http://www.env.go.jp/nature/dobutsu/aigo/1_law/revise_h24.html
(2018/01/27参照)

(ⅵ)猫13匹虐待、元税理士に有罪判決「動物愛護に反する」
https://www.asahi.com/articles/ASKDD3HL5KDDUTIL010.html
(朝日新聞DIGITAL 2017/12/12掲載)

(ⅶ)むさしの地域猫の会 「地域猫ってなんのこと?」
https://www.musashinoneko.com/%E5%9C%B0%E5%9F%9F%E7%8C%AB%E3%81%A3%E3%81%A6/
(2018/01/28参照)