「こだわり商店」の大きなこだわり

大隈通り商店街。早稲田大学の大隈講堂の前からグランド坂下までつづく通りで、食堂や喫茶店など早大生がよく行く店が軒を連ねる。その中に店頭まで 野菜をたくさん並べた「こだわり商店」がある。店主の安井浩和さんが実際に食べて美味しいと感じた商品のみを取り扱う点が特徴的なお店だ。こだわり 商店の特徴はそれだけではない。修学旅行生の販売体験など、通常の営業以外のことを精力的に行っている。なぜ通常の営業以外のことにも精を出すのか。店主 の安井さんにお話を聞いた。(取材・写真=大久保亮)

 

小さな店舗に魅力的な商品がずらり

 

こぢんまりとした店舗の中には、野菜、魚、加工食品など様々なジャンルの商品が並ぶ。

親しみやすい文字で書かれたポップが商品の魅力を引き立てている。1日100人ほど

こだわり商店の店先
こだわり商店の店先

が来店する。「子育て世代のお客様が多い。子供にはちゃんとしたものを食べさせたいという人が買い物に来る」と安井さんは言う。

こ だわりは商品だけではない。買い物に来たお客さんとコミュニケーションを取ることにもこだわっている。来店したお客様のほとんどが安井さんと言葉を交わ し、商品を購入していくという。よく店に来るという岩瀬さんは「店長が熱心に一つひとつの商品の説明をしてくれる。納得感のある買い物ができる」と話 してくれた。

 

始まりは育った街への感謝

 

こ だわり商店は、ある年配の常連客との会話がきっかけで生まれた。こだわり商店を開店する以前、安井さんは父が経営していたスーパーで働いていた。しかし、 スーパーという業態に限界を感じていたため、自分の代での閉店を決意した。スーパーを閉店する間際には、常連客の年配の方が訪れ、閉店することを惜しんで くれた。「この時に初めて地域の方に支えられていることに気付かされた。生まれ育った早稲田の地で商売をしていかなければと思った」(安井さん)。

お店は2007年に始めた。スーパーで働いている時に、自分自身が食べて選んだこだわりの商品をレジの前に並べたら飛ぶように売れたという経験を生かそうと考えた。こうして、自分が生まれ育った街への感謝の思いがつまったお店がスタートした。

 

「お客様の満足が商売につながる」

 

なぜ安井さんは通常の営業以外のことにも精を出すのか。「すべての取り組みは早稲田に住むお客様の満足度を上げるため。街への満足度が上がれば、街を使いたくなり、店の利益ももちろん上がる」と話す。

修 学旅行生の販売体験受け入れもその一環だ。頑張って商品を販売する生徒を見れば、街の人は商品を買ってあげたくなる。商品を購入したら、生徒を助けてあげ たようでなんだか気持ちが良くなる。生徒自身の成長にもつながる上に、店の利益にもつながる。過去の販売体験では、1時間にリンゴが800個売れたことも あるという。

 

「出て行きたくない街」をめざす

 

安井さんは今、新しい取り組みを始めている。

大 隈通り商店街を昼の時間だけ歩行者天国にすることだ。これは商店会で考えているという。そのために、大隈通りの交通量を調べて、警察に交渉に行く。この取 り組みもこだわり商店の直接的な利益にはつながらない。しかし、お客の満足度を上げるために、こだわり商店は通常の営業以外のことに取り組み続ける。

「早稲田に引っ越してきてください、と真顔で言える街をめざしたい」と安井さんは語ってくれた。それだけではない。一度住んだら出て行きたくなる街をめざすことに大いにこだわっている。