洋服のリペア「教え、広げる」
Patagonia目白店に学ぶ視点


アウトドア衣料品ブランドPatagoniaの目白店では、エコバッグのシェアリングや衣服のリペア(=修理)など、洋服にまつわる環境問題への取り組みが実施されていた。中でも、スタッフがリペアの方法を消費者に「教え、広げる」という姿勢が特徴だ。(文・写真=菊池侑大) 
Patagoniaについて

JR目白駅から歩いて5分ほど、Patagonia目白店は住宅街の中にある。Patagoniaはアメリカ発のアウトドア衣料品ブランドだ。「私たちは、故郷である地球を救うためにビジネスを営む。」というメッセージを発信し、衣服を通じた環境活動に積極的に取り組んでいる。[1]店舗で実際に行われている活動や工夫について知りたいと思い、取材へ向かった。

店内にみられる工夫

スタッフの吉良さんが店内を紹介してくれた。特に気になったのはレジ周りの工夫だ。籠が置かれており、色や大きさが異なる袋が詰まっている。この袋は「シェアバッグ」と呼ばれており、買い物袋の役割を果たしている。Patagoniaの店舗はレジ袋を使用する代わりに、スタッフやお客さんから集めた袋をエコバッグ・シェアリングとして貸し出している。お客さんはこのシェアバッグを、次に来店した時など、好きなタイミングで返却できる。
この「シェアバッグ」が入った籠の近くには、衣服の修理(リペア)のための道具が置かれていた。Patagoniaでは自社製品のリペアを行っており、店頭で実施するリペアをクイックリペアと呼んでいる。大きなホッチキスのような道具は、衣服にスナップボタンをつける際に使われる。また隣には、動物の形を模したパッチが置かれている。これは洋服の破れた部分を補修するためのもので、ダウンジャケットなどといった厚手の服にも使用できる。洗濯にも耐えられる強度であり、実用性にも配慮がされている。
レジカウンターで作業するスタッフが見慣れないものを手に持っていたので、話を聞いた。手にしていたのは「裂織り」という方法で作ったコースターであり、いらなくなったTシャツを細く裂いて、段ボールを土台に使って織っていく。「このくらいの大きさなら、30分くらいでできます」 。裂織りの大きさは自由自在に変えられるようで、試着室には裂織りで作られたラグが敷かれていた。

手のひらサイズのコースター(左の画像)。同じ手法で、ラグ(右の画像)のような大きさにもできる。
(菊池侑大撮影)
「教え、広げる」 姿勢の大切さ

店舗の工夫を学びながら、洋服と環境問題への活動の要点は「教え、広げる」姿勢にあることを学んだ。洋服を購入し、所有するのは消費者だ。消費者庁によると、自分の衣服の所有数について、10~50着と答える人が多い。[2] それぞれの消費者がリペアやリサイクルを自分で実践することで、環境問題への取り組みに効果が生まれる。そのためにも、リペアの方法を積極的に教えていく必要がある。
吉良さんは、接客の際にリペアのことを伝えるように心掛けている。消費者がリペアという選択肢を知ることで、自分が取れる行動が広がる。それによって洋服に対する見方もアップデートされるのではないかと考えるからだ。「実際、私も職場の人が持っているアイデアに驚くことがあります。たとえば汚れてしまったTシャツを藍染めして使っているという話を聞きました」。また、クイックリペアを行う際は、洋服を持ってきてくれた人と会話をし、時にはお手伝いをお願いするという。これも、リペアの知識を持って帰って実践してほしいという思いからの工夫だ。
このような取り組みの一環として、より多くの人にリペアを「教え、広げる」イベントも実施される。2023年6月の『ローカルリペアウィーク』という期間は、店舗に特設ブースを設け、来店した人にリペアを知れる機会を増やすという。[3]

[1]Patagonia, 2023. 「アクティビズム」. パタゴニア アウトドアウェア.
https://www.patagonia.jp/activism/ , (参照 2023-6-24).

[2]消費者庁, 2021.「サステナブルファッション」に関する消費者意識調査.

[3]Patagonia東京・目白, 2023. Instagram.
https://www.instagram.com/p/CtGsklOPWmz/?img_index=1, (参照 2023-7-14).