カフェと学生「支え合ってこの街は生きている」― 早稲田とコロナ


 

早稲田大学サークルとのコラボメニューを出す店として多くの早大生に知られているWhistle CAFÉ。店にはパフォーマンスサークルに所属する学生を中心に多くの早大生が足繁く通新型コロナウイルス蔓延の影響キャンパスに通う早大生の数が大幅に減った今、早稲田の街に店を構えるWhistle CAFÉはどのような問題に直面しどのような取り組みを行っているのか。Whistle CAFEのオーナーである吉田和生さん(46)に話を聞いた。(取材・文=山田雄大、写真=吉田和生さん、山田雄大)
 
トップの写真は、2020年6月18日、Zoomでの取材に応じ吉田和生さん
7年前に「地元」で店をオープン

「衣食住全てを仕事にしたかった」。そう語る吉田さんは、文化服装学院卒業後、アパレル関連の会社に2年、その後不動産会社に13年間勤め、2014年、早稲田の街にWhistle CAFEを開いた。

「最初は学生とのコラボは全く考えていなかった」。吉田さんは、開店前のイメージについて「昼はカフェ、夜はスポーツバーとしてたくさんの人が集まることのできる場所を提供したかった」と話す。早稲田に店を構えた理由は「地元が高田馬場で、店を始めるには地元がいいだろう」と思ったからだ。開店から7年経った今、想像していた形とは違えど、昼夜問わず多くの人が集う場所となっている。

とんでもない一年」が一転

今でこそ早大生に愛される店として知られているが、最初からそうだったわけではない。きっかけはオープンから2年目、早稲田大学チアダンスサークルMYNXからのコラボ依頼だった。イベントに向けて、コラボメニューを作って欲しいという頼みを吉田さんは快諾したという。その経験が早大生との交流の橋頭堡となった。昨年の早稲田大学サークルとのコラボ状況について、「20サークル、24コラボメニューを作った。Brilliant Pinksと放送研究会は年に二回コラボし、毎月二種類くらいコラボメニューがある状態だ」と話す。

Whistle CAFÉでは「2020年は東京五輪もあるので、2019年のうちにやれることは全部やろう」と考え、2019年には早稲田文化芸術週間には「カフェ進化論」(注1)という講演も行った。「機は熟した。2020年はきっととんでもない一年になる」そう思っていた矢先、コロナが日本で猛威を振るった。

6FF1A3F9-87FF-4CEE-B846-147E6C99C601【緊急事態宣言下での店内の様子吉田さん撮影

「一生の鉄板ネタ

それにより、学生街にあるWhistle CAFÉも大きな被害を被った。4月に予定されていた30以上の貸切パーティーはすべてキャンセルで、前年同月比の売上は94%減に落ち込んだ。さらに7月末までに予定されていた、現役早稲田大学サークル関連のイベントも店側から自粛することとなった。これほど深刻な被害を受けても、吉田さんは、今回のコロナ騒動を「一生の鉄板ネタだ」と笑いとばす。

これまでサークルとのコラボ、貸切パーティー、通常営業の3つを中心に営業してきたWhistle CAFÉ今回のコロナの影響で通常営業以外の2つは機能しなくなっている。客数は大幅に減ったが、通常営業は続けたという。その理由について、早稲田に不要不急ではない用事で来たたちがご飯を食べられないじゃないですか。だからその人たちのためにうちくらい開けてなきゃダメだなと思って」と話すしかし通常営業だけでは経営はかなり厳しい。そこで、Whistle CAFÉでは今、テイクアウトとUberEATSを利用してのデリバリーという新しい2つの取り組みを始めている。

しく始めたUberEATSにおける店の評価は、最高点が5.0であるのに対しWhistle CAFÉ4.9という高評価を得ており(6月18日の段階)、吉田さんは手応えを感じている。これにより、これまでWhistle CAFÉに行ったことがない人たちに知ってもらう契機なるだろう。

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テイクアウトを始めた頃の様子吉田さん撮影

クラウドファンディングに挑戦

Whistle CAFÉさらなる挑戦の一環としてクラウドファンディングを行っている。

御支援とかでお金を集めるのはあんまり気乗りしなかったしクラファンに関しては否定的だったと話す。しかし、多くの早大生からクラウドファンディングをして欲しいという声が寄せられたという。クラウドファンディングHP全て昨年の早稲祭で早稲田王になった大野が作ってくれた。あいつに関しては、もう友達みたいな感じだ笑顔で話す吉田さんからは、学生との心の距離の近さを感じることができる。

5月22日に始めたクラウドファンディングは開始二週間足らずで目標額である100万円を超えていた。支援も100人を超え現役の早生、OBOG、現役生の親と、支援者の層も幅が広い

Whistle CAFÉ真の魅力とは

何が学生を魅了しているのか。Whistle CAFÉで提供される料理。広々として、居心地が良いため、ついつい長居してしまうような店内の空間。他にも理由はたくさんあるしかし、私は吉田さんと話す中で、吉田さんの人柄こそが学生を魅了している主たる理由なのではないか思った

自分の娘が今大学二年生で、店に来る早大生とちょうど年代が被っている。だから彼らとは自分のとか息子のように接している。日常的にこの店を使っている子たちに関しては、彼女と来たり、それが別れちゃったり。この店でいろんなドラマを共有している」   

Whistle CAFÉに来る早大生の中に吉田さんに就活相談をする学生も多いという

支え合うカフェと早大生

「僕たちが学生たちを支えて、学生たちが僕たちを支える。そうやってこの街は生きているんじゃないかな」吉田さんは最後にそう話した。

コロナ禍の間に、街全体での取り組みとして、「わせまちマルシェ」(注2)というECサイトが立ち上がった。早稲田の街にある雑貨店の商品や飲食店の食事券をオンライン上での購入が可能である。Whistle CAFÉのランチ券なども購入可能だ。このECサイトを立ち上げたのは、早稲田大学OG・木暮美季さんだ。木暮さんは同サイト上で、「入学してから今日に至るまで、私たちはいかなる時も早稲田の街と共にありました」と書いている。早稲田の街を支える、今後の取り組みにも注目だ。

<Whistle CAFÉ>

HP https://whistlecafe-waseda.gorp.jp

Twitterアカウント https://twitter.com/WhistleCAFE

Instagramアカウント https://www.instagram.com/whistlecafe_official/

クラウドファンディングHP  https://t.co/aV8qukNFTE

(注2)「わせまちマルシェ」H P https://wasemachi-marche.stores.jp

すべて2020年7月9日までに閲覧

<追記>

2020年7月26日 小暮美季さんを木暮美季さんに訂正

2020年度春学期の瀬川ゼミ演習Ⅰ(3年生のゼミ)では、新型コロナウイルスの問題を取材実習のテーマとし、それぞれリモート取材に取り組んでいます。「海外コロナ事情」と「早稲田とコロナ」という2つの特集企画で記事をお届けします。