【ファクトチェック】「自民党・公明党・維新・国民らが増えれば消費税19%」は根拠不明 ネットで拡散


トップの画像は2022年6月21日、日本記者クラブで行われた党首討論会の様子=©AFP/David Mareuil

対象言説

2022年6月23日、Twitter上で匿名ユーザーが以下の投稿を行った。(1)このツイートは7月7日時点で2,800回以上リツイートされ、拡散されている。

#参院選
立憲・共産・れいわ・社民が増えれば消費税5%
自民党・公明党・維新・国民らが増えれば消費税19%
あなたはどちらがいいですか?
#消費税

(Twitterより)
(Twitterより)

このツイートの、「自民党・公明党・維新・国民らが増えれば消費税19%」の部分を対象言説として検証する。

 

選定理由

前述の通り、このツイートは2,600回以上リツイートされ、ネット上で広く拡散されている。また、今回の参院選では、物価高騰に対する経済政策が争点の一つになっている。消費税率の増減は世間の関心も高く、誤った内容のまま拡散されてしまえば有権者の投票行動にも影響を与えかねない。

以上の理由から、この言説を検証することにした。

この言説によく似た言説はこれまでもネット上でたびたび拡散されており、今回改めて拡散された形となる。2021年の衆院選でも類似言説が拡散され、Waseggは当時もファクトチェックに取り組んだ。(2)

「立憲・共産・れいわ・社民が増えれば消費税5%」という言説は、「時限的消費税減税法案」(正式名称:消費税の減税その他の税制の見直しに関する法律案)(3)を踏まえたものであると考えられる。同法案は時限的に消費税率を5%とするもので、2022年6月10日に立憲民主党、日本共産党、れいわ新選組、社会民主党の野党4党によって衆議院に共同提出された。

れいわ新撰組は今回の参院選において消費税廃止を公約として掲げているため、この言説はマニュフェストに照らせば齟齬があるように見えるが、同法案にも賛同している。そのため、今回の野党に関する言説はファクトチェックの対象外とした。

 

判定
「自民党・公明党・維新・国民らが増えれば消費税19%」=根拠不明

 

判定理由
自民・公明は増税について言及せず 維新・国民は減税の立場

今回の参院選で各党が示した消費税に対する姿勢は以下の通りである。

・自由民主党

自民党は選挙公約(4)で今後の消費税率について言及していない。しかし、岸田文雄首相は2022年5月25日の衆議院本会議(5)において「当面、消費税について触れることは考えておりません」と増税を否定しており、消費税について「据え置き」の立場であると考えられる。

・公明党

公明党も選挙公約(6)において消費税政策に言及していない。なお、6月19日に行われたNHK「日曜討論」(7)にて、竹内譲政調会長は「そう簡単に、安易に減税すべきではない」と発言するなど、減税については否定的な立場をとっている。

・日本維新の会

日本維新の会が発表した選挙公約(8)では、「消費税の軽減税率を現行の8%から段階的に3%(状況により0%)に 引き下げ、現下の物価高騰に対応します。その後は消費税本体を2年 を目安に5%に引き下げ、日本経済の長期低迷とコロナ禍を打破します」との記述があり、日本維新の会は消費税について「減税」の立場である。

・国民民主党

国民民主は選挙公約(9)において、「賃金上昇率が物価+ 2%に達するまでの間、消費税減税(10%→5%)を行います」と記しており、消費税について「減税」の立場を取っている。

 

以上のように、どの党からも消費税増税を志向するような発言は見られなかった。

 

「消費税19%」はこれまでたびたび提言されてきた

では、「消費税19%」という文言はどこから引用されているのか。ネット上でたびたび拡散されるこの「消費税19%」だが、これは2012年に経団連(日本経済団体連合会)が行った財政再建に関する提言(10)に端を発するものと思われる。

この提言において経団連は、提案する経済政策を全て実施した場合の「改革推進ケース」の前提として「消費税率を2014年4月に8%、2015年10月に10%へ引き上げ、その後、2017~2025年度の間、税率を毎年1%ずつ引き上げ、最終的に19%とする」と述べ、消費税率19%という目標を掲げている。

経団連はこれまで経済政策に数多くの提言を反映させてきた団体であり(11)、政治に強い影響力を持っている。その経団連が行った提言であることから、今でもネット上でこの文言がたびたび引用されているものと思われる。しかし、この提言は当時の野田政権(民主党)に向けて示されたものであり、現在の岸田政権との間には直接の関係はない。

 

また、2021年5月11日に経済同好会によって発表された試算結果(12)にも「消費税19%」についての言及が見られる。経済同好会の試算では、公債等残高対GDP比(国内総生産に対する政府の債務残高の大きさであり、100%より大きいとき債務の増加を意味する)が恒常的に前年度を下回るためには、仮に2026年度から1%ずつ引き上げた場合、2034年度時点で消費税が19%であることが必要だとしている。

しかし、この試算も「自民党・公明党・維新・国民らが増えれば消費税19%」という言説を裏付ける根拠とはならない。

 

以上の検証を踏まえ、「消費税19%」と現在の各政党との関連性は見出せず、選挙公約からも消費税増税の立場をとっている政党はなかったといえる。そのため「自民党・公明党・維新・国民らが増えれば消費税19%」と断言することはできない。

したがって、「自民党・公明党・維新・国民らが増えれば消費税19%」という言説は根拠不明と判定した。

 

脚注

(1)Twitter投稿, 2022年6月23日

https://twitter.com/ray202019/status/1539677852978671616

(2)Wasegg, 「【ファクトチェック】「自公維が勝つと消費税19%」は根拠不明。ネットで拡散」, 2021年10月30日

https://wasegg.com/archives/4402

(3)立憲民主党HP, 「野党4党共同で議員立法『時限的消費税減税法案』を提出」

https://cdp-japan.jp/news/20220610_3868

(4)自由民主党HP, 「参院選公約2022」

https://jimin.jp-east-2.storage.api.nifcloud.com/pdf/pamphlet/202206_manifest.pdf

(5)第208回国会衆議院本会議第29号, 2022年5月25日

https://kokkai.ndl.go.jp/txt/120805254X02920220525/25

(6)公明党HP, 「参院選政策集」

https://www.komei.or.jp/special/sanin2022/wp-content/uploads/manifesto2022.pdf

(7)NHK,「日曜討論~与野党に問う 参院選の争点は~」, 2022年6月19日

(8)日本維新の会HP, 「2022政策パンフレット」

https://o-ishin.jp/sangiin2022/manifest2022.pdf

(9)国民民主党HP, 「政策2022」

https://new-kokumin.jp/policies2022

(10)一般社団法人日本経済団体連合会, 「成長戦略の実行と財政再建の断行を求める〜現下の危機からの脱却を目指して〜」, 2012年5月15日

http://www.keidanren.or.jp/policy/2012/030_honbun.pdf

(11)一般社団法人日本経済団体連合会, 「経団連とは」, 「経団連の沿革」

https://www.keidanren.or.jp/profile/pro001.html

(12)公営記者団法人経済同友会, 「持続可能な財政構造の実現に向けて〜長期の経済財政試算を踏まえて〜」, 2021年5月11日

https://www.doyukai.or.jp/policyproposals/uploads/docs/210511b.pdf?210513

 

*最終アクセス日はいずれも2022年7月7日

運営責任者=瀬川至朗

記事担当者=山田祐太、丹羽ありさ

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