「(外国人が)家族旅行が目的で来日した」は誤り。 「事実上14日間の隔離はない」は正確。ネット上で拡散


(トップの写真は成田空港の検疫所で指示をする職員。2020年3月9日撮影=©KAZUHIRO NOGI/AFP)
対象言説

2021年5月15日、Twitter上に以下の内容が投稿された。

Twitterより
Twitterより

今回はこのツイートの内、「(外国人が)家族旅行が目的で来日した」という部分と、「日本はチェックが甘く14日間の事実上隔離はない」という部分を対象言説とする。

選定理由

対象言説は7月22日時点で1万2000リツイート、3万4000いいねされている。発言者は4万3000人を超えるフォロワーがいる。このツイート以外にも著名人が「他国は入国禁止、または2週間指定の施設で徹底隔離(省略)日本の水際対策…本当に甘いです」(5月10日、1710リツイート4357いいね)と発信するなど入国者に対する隔離対策へ不満の声が多く上がっている。緊急事態宣言が発令されている状況下で、人々は水際対策に強い関心をもっており、対象言説を検証する必要があると考えた。

判定
「(外国人が)家族旅行で来日した」=誤り
「日本は事実上14日間の隔離はない」=正確
判定理由
言説①「(外国人が)家族旅行で来日した」

まず外国人が、家族旅行を目的に来日することができるのかについてファクトチェックを行う。ここでの家族旅行を「家族同士の複数人が、誰も永住者・定住者の在留資格を持たずに日本を訪れること」と定義する。

外務省のHPによると「出入国管理及び難民認定法(入管法)第5条第1項14号に基づき、日本上陸前14日以内に以下の国・地域に滞在歴がある外国人は、当分の間、「特段の事情」がない限り、上陸を拒否する」こととしている(1)。

この「特段の事情」について上陸を許可される具体的な事例を法務省が発表している。日本に家族がいない外国人が新規入国する場合は、「教育」、「教授」、「医療」、「外交」、「公用」という特定の在留資格を取得する者など限られた条件を満たすケース以外の入国は認められない。

また、「特に人道上配慮すべき事情があるときや公益性があるときといった個別の事情に応じて特段の事情が認められる」とある(2)。つまり現在、家族旅行が目的で入国が許可されることはない。

従って、「(外国人が)家族旅行で来日した」という言説は誤りである。

 

言説② 日本は事実上14日間の隔離はない

元のツイートの内容は「日本のチェックが甘いから事実上14日間の隔離はない」というものである。この言説には主観的な要素も含まれているため、ここでは「事実上14日間の隔離はない」の部分について検証する。

厚生労働省のHPによると、海外から日本へ入国するすべての人が「14日間の公共交通機関の不使用自宅等での待機位置情報の保存・提示接触確認アプリの導入(※)等について誓約」しなければならない。制約に違反した場合、氏名や感染拡大防止に資する情報が公開され得る。日本人ではない場合は国籍が公開され得ること、在留資格取り消し手続き及び退去強制手続等の対象になる可能性がある(3)。

また、入国時に行われるPCR検査の結果が陰性であっても、入国の次の日から起算して14日間は各自で確保した滞在場所で待機することが要請され、保健所による健康確認の対象となる(4)。

しかし、直接的な監視や取り締まりは存在せず、あくまで要請である。さらに違反した場合の処罰も実行の可能性を含めた表現であり、必ず実行する趣旨の文言は記載されていない(5)。この制度が導入されて以降入国、帰国した7人を対象に独自に取材をしたところ7人中5人が処罰を回避して外出することができる環境であったと回答した。以下は「外出することができる環境」という証言の一部である。

(※)対象者は必ず、位置情報アプリとビデオ通話アプリをインストールすることになっている。

■Aさんの証言
位置情報アプリから日中ランダムに通知が送られてきて、そのタイミングで「自分で」位置情報を送信します。なので知らないうちに位置情報を確認されることは無いようです。ビデオ通話は毎日かかってきますが、そこでも背景を写すなどして家にいることを確認されます。ただ、これもビデオ通話にでなくてもとくに処罰はありません。

■Bさんの証言
一日一回ビデオ通話に出たら、もうその日のビデオ通話はないから、安心して出かけられる。だから、甘いです。

 

さらに5月25日、NHKは、厚生労働省の情報をもとに「(位置情報や体調を)報告をしない人が1日あたりおよそ100人にのぼり、連絡が取れず、所在が把握できない事例」が相次いでいることを報道した(6)。これによると、 5月中旬から新しいアプリを導入し何日間も連絡が取れないなど「悪質な事例」に限って氏名を公表するとのことである。

そこで、厚生労働省入国健康確認センターに「悪質な事例」の判断基準は何か、位置情報確認の操作を本人以外の者が行うリスクがあるのではないか、などについて問い合わせをした。しかし、「学生の研究には対応できない」との理由で取材に応じてもらえなかった。

以上から、一定の規制はあるものの、14日間の自宅等での待機は個々人の判断、裁量に任されているのは事実である。よって「日本には事実上14日間の隔離はない」という言説は正確であるといえる。

 

参考資料

(1)外務省、『新型コロナウイルス感染症に関する水際対策の強化に係る措置について』2021年7月16日

https://www.mofa.go.jp/mofaj/ca/fna/page4_005130.html#section7

(2)法務省、『新型コロナウイルス感染症の拡大防止に係る上陸拒否について』2021年7月22日

http://www.moj.go.jp/isa/content/001347330.pdf

(3)厚生労働省、『検疫所が確保する宿泊施設での待機・誓約書の提出について』

https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/0000121431_00249.html

(4)厚生労働省、『水際対策の抜本化に関するQ&A(令和3年3月21日時点版)』

https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/kenkou_iryou/covid19_qa_kanrenkigyou_00001.html#Q1-1

(5)厚生労働省、『水際対策に係る新たな措置について』2021年7月21日

https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/0000121431_00209.html

(6)NHK『“入国後連絡取れず”悪質な数人の氏名公表で最終調整 厚労省』、2021年5月25日

https://www3.nhk.or.jp/news/html/20210525/k10013049441000.html

*最終アクセス日はいずれも2021年7月21日

運営責任者=瀬川 至朗
調査・記事担当者=後藤陽佳・鳥尾祐太

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