青山に本店があるケーキ屋さんが早稲田に来たわけ Anniversary


早稲田大学(早稲田キャンパス)から早大通りに向かって、徒歩5分。ウェディングケーキと記念日スイーツをコンセプトとするケーキ屋「Anniversary」がある。店内に入ると、デコレーションケーキや、生菓子、焼き菓子が並んでいる。お店の可愛らしい雰囲気と華やかなスイーツは女性を中心とした幅広い客を惹きつけている。現在Anniversaryは青山を本店とし、早稲田、札幌に店を展開している。なぜ早稲田に出店することになったのか。社長の本橋雅人さん(トップの写真)にお話を伺った。

(取材・執筆・写真=田野百合巴)

 

食べることができるウェディングケーキ

Anniversaryは1990年「食べることができるウェディングケーキを作る店」(注1)として目黒にオープン。その後青山に移転した。「当時、ウェディングケーキはイミテーション(偽物)だった。入刀するところだけをチェンジさせていくような、1年間同じ偽物のケーキをみんなで使っていくようなスタイルだった。それっておかしいよね」。疑問を感じた本橋雅人さんは、「やっぱり本物の食べられるウェディングケーキにしたい」という想いから作り始めた。Anniversaryが手がけた本物のウェディングケーキは徐々に広まり、青山の厨房が手狭になった。他の場所探しを始めた。

Anniversaryのデコレーションケーキ。ウェディングケーキの技術を活かしている
Anniversaryのデコレーションケーキ。ウェディングケーキの技術を活かしている

 

きれいな街並みと早稲田ラグビーへの憧れ

「街並みがきれいだった」。本橋さんは早稲田を選んだ理由をそう話してくれた。店のある早稲田鶴巻町の早大通りは樹々がそびえ、のどかな景観だ。
また、学生時代の憧れも関係していた。本橋さんは、学生時代ラグビーをしていた。「自分が目指していた大学は実は早稲田だった。当時、今もそうですけど、早稲田ラグビーはすごく強くて憧れのラグビー部だった」。他の大学からいくつか推薦はきたものの、「いつもいつまでも、早稲田ラグビー、早稲田というものに憧れがあった」。土地を探していた時に憧れていた早稲田を思い出したことも理由の1つだった。

 

タイミングよく空いた土地

経済的な面からも、早稲田の土地は好条件だった。早稲田は家賃が安く、かつて本店を構えていた目黒や現在店舗を構える青山のほぼ半分だった。そんな早稲田の土地が空いたきっかけにはインターネットの普及が関係していた。
かつて早稲田周辺には、印刷会社や出版社がたくさん存在していた。早稲田店を開いた1999年頃には、インターネットが広く費普及するようになり、紙を電子資料におきかえるペーパーレス化が進行していた。印刷会社や出版社には痛手を受けるところもでてきた。そうして、お菓子屋に適した40坪のスペースが早稲田に空いたのだそうだ。Anniversaryが早稲田に来た理由には、偶然のタイミングも重なっていた。

 

早稲田店での展開

こうして1999年Anniversary早稲田店がオープンした(注2)。早稲田店の店舗奥には大きな厨房がある。現在は、店舗の他にも7カ所の建物が早稲田に点在する(うち4カ所が厨房、3カ所が事務所)。そこでは、約70名の従業員が働いている(うちパティシエは約50名)。こうして増えた厨房で、土日は100台ほどのウェディングケーキを製造し、ホテルに提供している。焼き菓子の製造もおこなっている。Anniversaryはオンラインショップや百貨店を通じて全国に焼き菓子を送っているが、その製造の起点が早稲田になっているという。

早稲田で製造している焼き菓子

 

20年目を迎えた早稲田店のこれから

Anniversary早稲田店はオープンして20年目になる(2019年現在)。早稲田プリンや早稲田ロールケーキなど、早稲田の土地に密着した商品も販売している。
「早稲田(鶴巻町)は早大通りの街並みが魅力的なので選んだが、分からない街だ。学生の街かと思えばそれだけではない。(普段は)人も多くはなく(町の)イベントがあると人が集まってくる。昔から住んでいる人がいる一方で、最近では海外の人も増えている。そんな中で20年目を迎え、多くのお客様に来ていただいている」
本橋さんは、早稲田での20年間の印象をそう語った。

今は地域の方とふれあえる企画を考えているのだそうだ。「一般の方にケーキをデザインしていただいて、限定日にちで販売させてもらい、その方にプレゼントしたい」。そのインタビューから約1ヶ月後、同店舗を再度取材で訪れた。店内の壁には、一般の人から応募があったケーキのデザイン画が飾られていた。すでに企画は実現していたのだ。何だか楽しくなった。

店内の壁に飾られた一般の方から応募されたデザイン画
店内の壁に飾られた一般の方から応募されたデザイン画

 

(注1)「アニバーサリーのあゆみ」アニバーサリーHP https://www.anniversary-web.co.jp/archives/1283

(注2)「アニバーサリーのあゆみ」アニバーサリーHP  https://www.anniversary-web.co.jp/shop/waseda