身近な早稲田駅 意外と知らない駅員さんのこと

早大生にとって最も身近な駅の一つである、東京メトロ早稲田駅。通っているのは東西線のみであるが、一日平均8万人以上 (注1)と多くの人が利用する。駅の運営の上で欠かせないのが駅員さんの存在だ。毎日のように利用していても、一度も話したことがない人も多いだろう。駅員さんは普段どのようなことをしているのか。早稲田駅に勤務する熊井光弘さん(34)と近藤祐貴さん(32)に、仕事などについてお話を伺った。(取材、執筆、写真=今山和々子)

 

■大学行事の日は大学との連携プレーも

午前10時半すぎ。ちょうど2限に向かう学生たちによって、改札付近はごった返していた。早稲田駅が最も混雑する時間は朝と夕方のラッシュ時である。特に通勤と授業の前後が被る時間は特に人が多い。では、最も混雑する時期はいつだろうか。お二人によると、入試、卒業式、入学式、オープンキャンパス、文化祭…。大学の行事以外に、大学を会場として貸し出す外部試験の日もある。早稲田駅の駅員さんは通常6~7人体制。混雑が予想される日は、大学側からあらかじめスケジュールの連絡があり、それに合わせて増員を要請するそうだ。入学式では、今年から大学が駅構内の階段に人を配置してくれるようになったという。「とても助かるので、今後ともお願いしたいです(笑)」(近藤さん)。

 

駅のアナウンスをする近藤さん
駅のアナウンスをする近藤さん

 

■ワセメシを食べますか?

早稲田駅の駅員さんは、休憩時などに駅周辺を歩くことはあるのだろうか。

「何かあったときに動けないといけないので、基本的には外に出れないんです」(近藤さん)。人身事故など、いつ何が起こるかわからない。仕事の性質上、休憩は駅構内の事務所で取るそうだ。「散策するのは、新人で来た時に周囲を勉強するためにするくらいです」(近藤さん)。実は、 駅周辺のことはあまり詳しくないのだ。では、早稲田界隈のご飯・通称ワセメシ (注2)はどうか。「2、3週間に1回ほどですが、わせ弁(注3)は食べたりします」(熊井さん)。早大生御用達のわせ弁は、頻度は少ないものの食べることがあるという。

 

近藤さん(左)と熊井さん。仲の良さがうかがえます
近藤さん(写真左)と熊井さん(同右)。仲の良さがうかがえます

 

■カメや「人の首」 驚きの落とし物

駅員さんの大事な業務の一つに、忘れ物の管理がある。今までで最も驚いた落とし物について聞くと「早稲田駅ではないのですが、カメの落とし物がありました」と熊井さん。お客さんがカゴに入れて持ち歩いていたカメとはぐれてしまったらしい。結局大手町にいたそうだが、もはや『物』ではない。さらに、近藤さんは「生首ですかね。マネキンの 」と話す。「届いたバッグを開けるじゃないですか。そしたら、髪の毛があったんです。うわあ、これはやってしまったと思いました(笑)」。結局それは美大生のマネキンだったそうだ。

そんな数々の忘れ物は、駅に届けられた後、東京メトロのネット 上に登録される(注4)。登録した瞬間から、どの駅のパソコンからでも調べられるようになるシステムだ。「探している忘れ物を、思い通りに見つけられると嬉しいです」(熊井さん)。お客さんも駅員さんも笑顔になれる瞬間である。

 

落とし物を登録する熊井さん
忘れ物を登録する熊井さん

 

■駅員さんから見た早稲田駅

あまり外に出ない駅員さんにとって、早稲田駅の魅力とは何か。「学生が多いので、イベントごとに敏感になれます」(近藤さん)。確かに、春は新歓のプラカードを持った人、夏は花火大会のために浴衣を着ている人、秋にはハロウィンの仮装をしている人がいる。「地下にいながら季節を感じられるのが、この駅の特徴です」(同)。また、1番出口から徒歩10分ほどのところに「漱石山房記念館」(注5)が開館したことから、若い人だけでなく年配の人も多く訪れるようになったそうだ。

 

■早大生にお願い 数メートル後方に

早稲田駅を利用する早大生向けに、お二人からお願いがあるという。2番線(高田馬場方面)では、あまり前の方に固まって乗車しないで欲しいとのことだ。隣の高田馬場駅でのJR山手線と西武線への乗り換えは、先頭車両が最も近い。授業終わりには、早稲田駅の改札の外や階段まで人が溢れている光景も珍しくないのだ。

「高田馬場で乗り換えたいからという気持ちはとても分かるのですが、閉められなくてどんどん電車が遅れていってしまいます」(熊井さん)。後方車両は空いていることが多く、なぜ遅延するのだろうと不思議がるお客さんもいるのだそうだ。「一車両ずつでもずれてもらえれば」(近藤さん)。全員が気持ちよく使える駅を目指すために、ほんの数メートルだけでも後方に移動することをお勧めしたい。

 

☆本取材の実現に当たり、東京メトロ営業部・山本洸さんにお力添えを頂きました。ありがとうございました。

<注>

(注1) データは2017年度。東京メトロHP『各駅の乗降人員ランキング』https://www.tokyometro.jp/corporate/enterprise/passenger_rail/transportation/passengers/index.html (2019年7月9日アクセス)

(注2) 早稲田大学周辺で食べられるご飯、またご飯屋さんのことを『ワセメシ』という。

(注3)『わせだの弁当屋』というお店のこと。また、そこで販売されているお弁当。安くてボリュームが多いことから早大生に人気がある。

(注4)東京メトロHP 『お忘れ物をしたときは』

https://www.tokyometro.jp/support/lost/index.html#anc02 (2019年7月9日アクセス)

(注5)夏目漱石が暮らした「漱石山房」を再現した造りの記念館。新宿区が運営している。名誉館長には夏目漱石の孫にあたる半藤末利子さんが就任した。

新宿区立漱石山房記念館HP https://soseki-museum.jp/ (2019年7月9日アクセス)