早稲田佐賀からみえてくるワセダ

かつて地方出身学生が多いことで知られた早稲田大学だが、近年その数が減少し、現在学生の約7割は首都圏出身となっている(注1)。首都圏集中が進むなか、2010年、大隈重信生誕の地である佐賀県に早稲田佐賀中学校・高等学校(以下「早稲田佐賀」)が開校した。国内にある早大の系属校(注2)のなかでは最も新しく、かつ、大学のある東京からは最も遠く離れた場所にある。地方における早稲田のイメージや認知度はどうなのか。早稲田佐賀から早大に進学した学生3人に取材をした。(取材・写真=清水郁)

 

それぞれに環境が異なる早稲田佐賀出身者

 

今回取材に協力してくれたのは、法学部1年の松村愛梨さん(18)=写真中央=、文化構想学部1年の坂牧舞香さん(18)=写真右=、そして教育学部3年の川邉瑶子さん(20)=写真左=だ。筆者自身が早稲田佐賀出身ということもあり、友人の紹介で3人に話を聞くことができた。

早稲田佐賀入学前の環境は3人それぞれに異なっている。

大分県出身の川邉さんは早大とは無縁の環境で育ち、もともと早大進学は視野になかったという。一方、松村さんは佐賀県出身だが身内に早大の卒業生がいたため、間接的に早大と縁があった。また、東京出身の坂牧さんは早大進学を目指して早稲田佐賀に入学。晴れて早大推薦が決まった今年、6年間の佐賀での寮生活を経て東京に戻ってきたという面白い経歴の持ち主である。早稲田佐賀には、坂牧さんのように早大進学を目指して関東から来ている生徒が全体の2割近くいる(注3)。

早稲田佐賀出身の学生に聞きたかったのは、①入学前や在学中に遠く離れた早大に対してどのようなイメージを持っていたのか②周りの人たちが持つ早大のイメージはどのようなものだったのか③地方出身学生の減少についてどう思っているのか――の3点である。

彼女たちの話を紹介していこう。

 

早稲田のイメージ

 

まず、早稲田佐賀入学前、早大に対してどのようなイメージを持っていたのか、である。九州出身の松村さんと川邉さんは「スポーツが強い」「駅伝で有名」「テレビでよく見る」などを挙げ、テレビを通して見たものが大きく影響している印象だった。一方、坂牧さんは「オープン」「人との交流が豊か」「明るい」というような校風を挙げ、早稲田が身近にあったことが窺える回答だった。

松村さんと坂牧さんは早稲田佐賀在学中もあまりイメージは変わらなかったという。川邉さんは在学中に早慶戦を見たのがきっかけで早稲田に「土臭さ」を感じ、それまで遠い存在に思っていたが「自分にも合うかもしれない」と印象が変わったことを明かしてくれた。

 

早稲田を知らない人がいる衝撃

 

九州では早大より九州大学や西南学院大学(共に福岡市)の方がよく名前を知られている。そもそも早大を知らないという人も少なくない。また、知っていても遠い存在だと思っている人が多い印象がある。そのような中で、彼女たちも周りの人たちの反応で九州における早稲田の知名度の低さや認識の違いを感じることがそれぞれにあったようだ。

坂牧さんは、早稲田佐賀に進学して出会った九州出身の友人たちが「(早稲田を)東京にあるというだけで持ち上げていた」印象があったと語る。東京出身である自分の方が早大が身近な存在なのだと実感したという。また、早稲田佐賀のある佐賀県唐津市で他校の生徒に「早稲田を知らなかったけど調べてみたら凄いところだった」と言われたことがあり、「知らない子がいることが衝撃だった」というエピソードも教えてくれた。

 

佐賀県に系属校があるメリット

 

早稲田の系属校が東京から離れた九州にあるメリットは何だろうか。3人に共通して出たのはやはり九州における早稲田の知名度が上がることだった。知名度が上がることで九州から早大に進学する学生が増えるきっかけにもなるのではという意見もあった。実際のところ、筆者を含め早稲田佐賀ができていなければ早大に進学していなかった九州出身の学生は多くいるはずだ。

また、川邉さんは「福岡じゃなくて佐賀なのがいい」という。田舎の人は都会にあると敬遠するのでは、と自身の境遇から佐賀にあることのメリットを挙げてくれた。一方、松村さんは、佐賀だと交通の便がよくないため福岡の方がよかったという意見だった。

 

早稲田の魅力をもっと身近に

 

近年指摘される、早大生に占める地方学生の減少の理由についても尋ねてみた。

坂牧さんは「知名度は関係ないと思う」と話し、九州から出たくない、親元から離れたくないという人が増えたのではと指摘した。同様に松村さんも地元志向、安定志向が強まっていることを原因として挙げ、加えて経済的理由も大きいと指摘した。その対策として地方出身者向けの奨学金制度の充実を提案してくれたが、取材後に調べてみたところ既にそのような対策は取られていることが分かった(注4)。しかし、その制度が知られていなければ意味がないため、周知が不十分であることも原因のひとつだと分かった。

では、他にはどのような解決策があるだろうか。坂牧さんは「親元を離れ地元を出てまで早稲田に通いたいと思わせなきゃいけないですもんね、難しいですよね」と答えに悩みながらも「(早大を)もっと前に出した方がいい」と意見を出してくれた。以前は「ハンカチ王子」など早稲田の話題をよく耳にしていたが最近は少なくなったように感じるといい、わざわざ上京までして通いたいと思わせる早稲田の魅力的な話題が必要だとした。

川邉さんは「テレビの中の手が届かない存在という早稲田のイメージ」がその妨げになっているのではといい、より身近な存在に思ってもらうことが必要だとした。また、早稲田ブランドをもっと地方に推していくべきだといい、今はまだその魅力が「伝わっていない、もったいない!」と現状をもどかしく思っている様子だった。

3年間もしくは6年間、東京から離れた場所で「早稲田」と名のつく学校に通い、早稲田の認識のされ方の違いを感じていた彼女たち。その経験からか、インタビューでは「もっと早稲田を身近に感じて早稲田の魅力を知って欲しい」という思いが強く感じられた。

 

(注1)“佐賀新聞LiVE”「佐賀拠点に体験型学習 早大総長、知事対談で表明」〈http://www.saga-s.co.jp/news/saga/10101/210235〉2016年6月15日アクセス

(注2)早稲田大学の附属校・系属校 – 早稲田大学 入学センター <www.waseda.jp/inst/admission/others/attached/>2016年7月24日アクセス

(注3)“早稲田佐賀中学校・高等学校”「エリア別在校生出身地」〈http://www.wasedasaga.jp/index.php?mode=area〉2016年6月15日アクセス

(注4)“早稲田大学奨学課”  〈http://www.waseda.jp/inst/scholarship/〉2016年7月24日アクセス