「オリンピック選手村に配布されるコンドームは税金によるもの 」は誤り。ネットで拡散
(トップの写真は2020東京オリンピック・パラリンピックの選手村。2021年6月20日撮影=Behrouz MEHRI / AFP)
対象言説
ネット上で「オリンピック選手村に配布されるコンドームは税金によるもの」という指摘が相次いでいる。Twitterで拡散しているのは5月27日に投稿された以下のようなツイートだ。
「オリンピック選手村に コンドーム15万個配布 おいこら!税金返せや!」
このツイートは7月4日時点で2841リツイート、3352いいねされている。
また、この他にも同様の言説がTwitter上で拡散している。
「何度考えてもコンドームを税金で買って無料で大量に配るのって意味がわからない。」
(6月1日、604リツイート1661いいね*7月4日時点)
「16万個もコンドームを選手村で配る計画がバレて世間から批判されてる組織委。言い訳がヒドい。『選手へのお土産だ。大会中の使用は想定してない』。税金でお土産にコンドームとか、新しいアートかよ。ふざけんな。嘘つくな。」(5月30日、1447リツイート2915いいね*7月4日時点)
今回は、「オリンピック選手村に配布されるコンドームは税金によるもの」という言説をファクトチェックの対象とする。
選定理由
先述したとおり、この情報はネット上で広く拡散している。
これらのツイートのリプライ欄を見ると、「くたばれ、政府」「アスリートは体力と精力だけで能力はない」など、当該ツイートの内容を事実だと信用し、政府批判や選手に対する誹謗中傷を行うユーザーもいた。その一方で「これはメーカーの寄付です」といった指摘もある。
本当に「オリンピック選手村に配布されるコンドームは税金によるもの」という事実はあるのか。今回、この言説を検証する必要があると考えた。
判定
オリンピック選手村に配布されるコンドームは税金によるもの=誤り
判定理由
事実関係を明らかにするため、日本オリンピック委員会、日本国内におけるコンドームシェア1位のオカモト株式会社、同2位の相模ゴム株式会社(以下、相模ゴム)に、選手村に配布されるコンドームについてWebサイトより問い合わせを行った。それに対して、6月21日に相模ゴムの営業企画室から、メールにて以下の回答を得た。
「東京五輪選手村に提供するコンドームにつきましては、合計16万個のコンドームを国内4社のメーカーが無償で提供いたします(4万個/社)」
つまり、相模ゴムの回答によれば、選手村に配布されるコンドーム16万個は国内4社のコンドームメーカーによる寄付であり、税金によるものという事実はなかった。したがって、「オリンピック選手村に配布されるコンドームは税金によるもの」という言説は誤りである。
コンドームは、五輪終了後帰国する選手たちへのプレゼントに
ただし、コンドームはオリンピック競技が終了して帰国する選手に配布され、オリンピック村では使用されないという。
大会組織委員会は、6月22日、公式ホームページ上で、「アスリートの皆さんに、性感染症予防の重要性や感染症対策としてのコンドームについて、目を向け理解をしてもらうとともに、母国に持ち帰って啓発にご協力いただくことを目的として提供をしています」[ⅰ]と発表している。
そもそもなぜ、選手村でコンドームが配布されているのだろうか。
その理由について大会組織委員会は、「今から約30年以上前、国際オリンピック委員会(IOC)は、HIV/AIDS(ヒト免疫不全ウイルス・後天性免疫不全症候群)の世界的な感染拡大を受け、HIV/AIDS予防対策の啓発活動の一環として、ソウル1988大会からコンドームを配布し、以来、継続して取組を進めてきました」[ⅱ]と記している。エイズ予防対策の啓発活動が出発点となっている。
「帰国する選手へのプレゼント」について、韓国紙の東亜日報は、6月22日の「33年間続いた選手村の無料コンドーム配布、東京五輪では『帰国の際に配ります』」という記事で、以下のように報道している。
「当初、約16万個のコンドームを準備していた委員会は、新型コロナ感染拡大防止という原則に反すると批判の声が高まっているのを受け、『五輪が終わった後、選手村を出て帰国する選手たちにプレゼントする』と話した」。[ⅲ]
今回、コンドームの無料配布を選手が帰国するタイミングで行うことになった背景には、新型コロナウイルス感染拡大防止の原則に反するという批判の声が高まったことがあるようだ。
参考資料
[ⅰ]公益財団法人東京オリンピック・パラリンピック競技大会組織委員会、「選手村におけるコンドームの提供について」、6月22日 [ⅱ]同上 [ⅲ]東亜日報、「33年間続いた選手村の無料コンドーム配布、東京五輪では『帰国の際に配ります』」、6月22日https://www.donga.com/jp/article/all/20210622/2740012/1/33年間続いた選手村の無料コンドーム配布、東京五輪では「帰国の際に配ります」
*最終アクセス日は2021年7月31日
運営責任者=瀬川 至朗
調査・記事担当者=杉江隼・鳥尾祐太
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