【ファクトチェック】「吉村大阪府知事がポケット手をつっこんだまま街宣」はミスリード。手を突っ込んだ時間は長くて7秒程度


トップの画像は大阪維新の会公式YouTube(*2)より

対象言説

2022年6月19日にTwitter上で匿名ユーザーが以下の投稿を行なった(*1)。(以下原文ママ)

吉村 大阪府知事
長野駅前の街宣らしいです。
わたしゃ、後にも先にも、ポケット手をつっこんだまま街宣すると言う国民・県民・市民を舐めきった人ははじめてですわ。

このツイートは22年7月4日現在、Twitter上で7000件以上のいいねと4000件以上のリツイートを獲得しており、広く拡散している。今回はこのうち「吉村府知事がポケットに手を突っ込んだまま街宣」について検証する。

(Twitterより)
(Twitterより)
選定理由

7000件以上のいいね、4000件以上のリツイート・引用リツイートがあり、広く拡散している。また政治家の社会的評価に関わる重大な件であるため検証すべきと判断した。

 

判定
「吉村府知事がポケットに手を突っ込んだまま街宣」=ミスリード

 

判定理由

YouTubeで街頭演説中の映像を確認したところ、ポケットに手を突っ込んだ瞬間はあるが長くても7秒ほどであり、当該言説から抱くイメージとの間に乖離があった。

 

検証手法について

上記ツイートの添付画像では、確かに吉村知事がポケットに手を突っ込んでいることがわかる。しかし、画像だけではいつ、どのくらいの間ポケットに手を入れていたかが分からず「悪意のある切り取りだ」との批判もなされている。そこで、演説中の動画とツイート画像を突き合わせながら検証する。今回の長野駅前の街頭演説は参院選公示日前の6月18日(土)に行われた。その様子は日本維新の会の公式YouTubeで配信され、そのアーカイブ動画(*2)が残っている。

リンク:https://www.youtube.com/watch?v=kr3aByCoto0

街頭演説の動画は48分12秒で、ワンカットで撮影されている。参院選の公示日前に、長野県選挙区からの立候補予定者と比例代表区の立候補予定者が選挙カーの上に立って演説し、その後に吉村知事が日本維新の会副代表として演説した。動画のカメラはツイート画像の撮影位置とは別角度で、かつ下方向から撮影している。ポケットに手を入れている様子は車上の看板に隠れてしまい、直接は捉えていない。しかし、吉村知事は演説中に身振り手振りを多用するため、ほとんどの時間で右手が動画に写っている。一方で、右手が画角から消えた瞬間は4回あり、それらを見比べることで、どのタイミングでポケットに手を入れたのか判定することができた。

着目したのは吉村知事がマイクを持つ時の手の位置と形である。

マイクを持つ左手の形と位置関係から検証(Twitter画像)
マイクを持つ左手の形と位置関係から検証(Twitter画像)
拡散した画像は演説の一部分を切り取ったもの

動画を確認したところ、吉村知事が左手でマイクを持ち、右手が画角から消えたのは以下の4回であった。

・25分58秒頃の画像

画像25.58

最初に右手が画角から消えたのは25分58秒頃である。
演説に駆けつけた吉村知事がマスクを外しポケットに入れているところで画角から消えている。

・30分50秒頃の画像

画像30.50

次に、30分50秒頃に右手が画角から外れている。このタイミングでは文書・通信費について述べていた。7秒ほど見切れている。

・33分13秒頃の画像

画像33.13

33分13秒頃では、吉村知事が「国会議員の人たちは文通費を『ポッケナイナイ』している」と発言しており、そのジェスチャーとして右手ポケットを指差しているものと思われる。

・41分40秒頃の画像ファクトチェック吉村知事4

最後に、41分40秒頃から約18秒間、右手が画角から外れている。このタイミングでは、文通費問題や国会議員の給料に対する批判を述べている。

画像を比較し、30分50秒頃の画像と特定
・25分58秒頃の画像と比較

画像_マイクを持つ左手

画像5

 

 

 

 

 

 

 

 

動画では左手人差し指と中指の間が大きく開いており、画像とはマイクの持ち方が異なる。よって画像は、マスクをポケットに入れたタイミングではないことがわかる。

・30分50秒頃の画像と比較

画像_マイクを持つ左手画像6

 

 

 

 

 

 

 

 

マイクを持つ左手の形がよく似ている。また、マイクを束ねるテープと左手との位置関係から、動画と画像はマイクを持つ位置もほぼ同じであることがわかる。

・33分13秒頃の画像と比較

画像_マイクを持つ左手画像7

 

 

 

 

 

 

 

 

左手の指の形は似ているが、テープと左手の位置関係から、動画(からの画像)のほうがマイクのやや下の方を握っていることがわかる。

・41分40秒頃の画像と比較

画像_マイクを持つ左手

ファクトチェック吉村知事4トリミング

 

 

 

 

 

 

 

まず、マイクを持つ左手の形と位置関係は、動画から切り出した画像の方がやや小指を曲げているもののよく似ている。次に、吉村知事が着用している洋服にできているシワの形状を比較したところ以下のような相違点が認められた。

ファクトチェック吉村知事しわ

 

ファクトチェック吉村知事しわなし

 

 

 

 

 

 

 

(赤い丸印は記事担当者)

①シャツの第二ボタンから肩にかけてほぼ水平にあるシワが41分40秒頃の動画にはあり、ツイートの画像にはない。
②脇の方に大きく二つに分かれているシワがツイート画像にはあり、41分40秒頃の動画にはない。

以上2点の違いから、ツイート画像と41分40秒頃の動画は、別の瞬間を捉えた物だと判明した。

ファクトチェック吉村知事しわ特定

(赤い丸印は記事担当者)

確認のため、同じく左手の形と位置関係が似ている30分50秒頃の動画を見ると、ツイートの添付画像と同様に、シャツの第二ボタンから肩にかけて目立つシワがなく、脇の方に大きく二つに分かれているシワが確認できる。

以上の検証から、ツイートの添付画像は、30分50秒頃のタイミングであることが判明した。実際の映像で30分50秒前後の様子をもう一度確認したところ、右手が7秒ほど画角から消えており、このタイミングでポケットに手を入れていることになる。

今回、吉村知事が演説中にポケットに手を突っ込んだタイミングがあることは事実である。しかし、その秒数は長くても7秒ほどで、吉村知事の演説全体に占める割合は極めて短いといえる。「吉村大阪府知事がポケット手をつっこんだまま街宣」という言説から抱くイメージと、実際の様子には乖離があるため、対象言説をミスリードと判断した。

 

*訂正とお詫び(2022年7月7日)

街頭演説の動画の中で、吉村知事が左手でマイクを持ち右手が画角から消えた瞬間は「3回」としておりましたが、正しくは「4回」でした。該当箇所は41分40秒頃から41分58秒頃までの約18秒間です。ファクトチェックの判定内容や、ツイートの添付画像が撮影された時点(30分50秒ごろ)の特定に変更はございません。訂正するとともに、謹んでお詫び申し上げます。

 

脚注

(1)Twitter投稿、2022年6月19日

https://twitter.com/kissan39/status/1538177903061479424?s=20&t=hEydYqniDaOAjl1MXLJOww

(2)YouTube、大阪維新の会

https://youtu.be/kr3aByCoto0

*最終アクセス日はいずれも2022年7月4日

運営責任者=瀬川至朗
記事担当者=本橋瑞紀、丹羽ありさ

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