本当の「意識高い系」とは ~現役早大生起業家3人から共通点を探ってみた~

学生のうちに起業という手段で自分のやりたいことを実行する人たちがいる。多くの学生は、そんな起業を志す学生のことを、なぜか「意識高い系」といって揶揄する傾向がみられる。「学生起業家」の人たちは一体どのような人たちなのだろうか。私たちはその実態に迫るべく、現役早大生の学生実業家をインターネットや知り合いを通じて探し、3人にお話をうかがうことができた。インタビューを通じて学生起業家の共通点を探った。(取材・執筆・撮影=遠藤加奈子・織田媛乃・高野雷三)

 

インタビューに応じていただいた3人の学生起業家

今林さん

 

EAGLYS株式会社 代表取締役社長 今林広樹さん

今林さんは早稲田大学先進理工学部を卒業後大学院に進学、現在は基幹理工学研究科博士課程に属する25歳。修士課程1年、24歳の時に EAGLYS株式会社[i]を設立した。EAGLYS株式会社は「企業がAIやデータベースを安心して使えるインターネット空間を創ること」をビジョンに掲げ、データを暗号化したままAIを実行する世界初のSecureAIエンジンの研究開発・提供を行っている。

 

渡辺さん

 

合同会社Back to Front 代表 渡辺快さん

渡辺さんは早稲田大学商学部に在籍(現在は休学中)する22歳。大学2年生、20歳の時に合同会社「Back to Front」[ii]を立ち上げた。合同会社「Back to Front」は企業の経理代行サービスや税務相談といったバックオフィス事業を展開している。

 

鬼頭さん

 

Zidai株式会社 取締役 鬼頭悠佳さん

鬼頭さんは早稲田大学政治経済学部政治学科5年生で現在23歳。大学3年生、21歳の時にZidai株式会社[iii]を設立。Zidai株式会社の事業内容はWebディレクションから新人育成、部下のマネジメント、経理、営業など多岐に渡る。

 

―起業のきっかけは何ですか?

今林さん
「大学院修士1年生の4月、AIに関するデータセキュリティの論文に出会って、この分野は世界を変える、と直感的に思ったので起業しました。」

渡辺さん
「税務署で働き、税理士となった父のすすめですね。」

鬼頭さん
「大学1年の時にバーのアルバイトの面接に行った店の経営者の方に誘われたからです。」

データセキュリティの論文に出会い、『世界を変える』と感じて起業した今林さんのように自分できっかけを見つけ出したパターン、税理士である父の勧めで起業した渡辺さんのように家族から勧められて起業したパターン、アルバイトの面接で出会った経営者の方と意気投合し、その方の勧めで起業した鬼頭さんのように偶然出会った人に勧められて起業したパターン、といったように起業のきっかけは三者三様であった。

 

―起業することに不安はありませんでしたか?

今林さん
「その学問についてめちゃくちゃ勉強したので、知識面での不安は全くありませんでしたが、もちろん金銭的な不安はありましたね。お金もコネも何もない状態から起業して、初めのお客さんが付くまではずっと胃が痛くて吐き気で起きる毎日でした。今となってはいい思い出ですけど(笑)」

渡辺さん
「(全く感じなかったわけではないけれど)正直不安はそんなには無かったですね。」

鬼頭さん
「もちろんあったけど、世間が思っているよりリスクが低いと考えていたので、ある程度の自信はありました。」

三人とも、程度は違えどある程度の不安を抱えながら起業していた。起業してから上手くやっていけるのか、ちゃんとお金を稼げるのか、など多くのリスクを考えた上でもこの事業で成功したいという情熱を三人のインタビューから感じた。

 

―今の大学生は学生起業家などを「意識高い系」と揶揄する風潮がありますが、ご自身にそういった経験はありますか?またそういった風潮についてどう思いますか?

今林さん
「自分自身は無いですね。揶揄される人たちって『意識高い系(笑)』っていう感じで(笑)が付きますよね。そういう人たちは大体、専門性やアイデアがある訳ではないのにツールとして起業を考えている。だからそれは本人たちが悪いなと思います。でもやりたいことが明確で、どういう世界を作りたいかが明確な人には(笑)が付かないと思うんです。だから僕は言われなかったんだろうと思います。ただ、そういった風潮は必要だとは思います。こういった風潮があるからこそ頑張れる人がいるし、そもそもこうした波が無いと社会もお金も動かない。起業をしようとする若者にどんな形であれ目が行くことが大切だと思います」

渡辺さん
「僕自身はあまり言われた経験はないですね。ただ学生が起業することを「意識高い系」と思っている人が多いとは感じます。でも実際起業する人は、そう思っていないことが多いと思います。少し資金はかかるけれど、今はサークルを作る感覚で会社を作れる。行動を起こすアクティブさがあれば起業できる。そんなに意識が高い事でも無いと思いますね。」

鬼頭さん
「そもそも自分は起業家ではなく経営者だと思っています。経営者と起業家は全然違う生き物で、起業家は、誤解を恐れずに言えばポエマーみたいなもの。経営者は人・モノ・金をどう扱うかを考え、意思決定をする人のことです。よく世間で馬鹿にされているのは夢だけを語って行動を起こさない起業家。僕は一般的な起業家のイメージと違ってすごく泥臭く、地道に仕事をしている。また、たとえどんなに世間で揶揄するような声があっても、結果がでれば人はついてくると信じています。」

この質問に関しても三人とも「意識高い系」と揶揄されたことは無いということで一致した。また三人ともそういった世間の風潮をあまり気にしている様子はなかった。実際に起業した三人のお話を聞くと、実際に自分が何をやりたいかを口に出すだけでなく、それを行動に移す力があった。その行動力こそが世間で「意識高い系」と揶揄されている人たちと、学生起業家として成功を収めている人の違いであると思った。

 

とことん突き詰め 行動に移す力

以上、現役早大生起業家3人に話を伺った。インタビューの通り3人とも起業するまでのプロセスはそれぞれ異なっていたが、起業を通してこの世界を変えようという強い意志は3人に共通している点であった。またその目的達成のためには努力を惜しまない、真面目で誠実な性格であることもインタビューを通して私たちが感じた共通点である。世間の起業を揶揄する声については全員がそもそもその風潮を気にしていなかった。周りの声はあまり気にせず、自分がやりたいと思ったことをとことん突き詰め、行動に移す。そんな彼らの姿は世間からは揶揄されない本当の「意識高い系」であると感じた。

 

(注)

[i] EAGLYS株式会社

[ii] 合同会社「Back to Front」

[iii] Zidai株式会社